声劇×ボカロ_vol.10 『 ヤキモチの答え 』
To be brave,One step ahead
【テーマ】
ヤキモチの行方
【登場人物】
望月 蒼太(17) -Sota Mochizuki-
あかりのことが気になって、勝手にヤキモチを妬いている。
告白できないまま、時だけが過ぎる。
早坂 あかり(17) -Akari Hayasaka-
恋を知らず、他の子たちと同じようにドキドキしたいと思っている。
ヤキモチに夢みる少女。
【キーワード】
・ヤキモチ一方通行
・君の笑顔
・独り占めしたい気持ち
・勇気を出して
【展開】
・コイバナに花を咲かせる女子。その会話に聞き耳をたてる蒼太。
・小さなことで世界が変わることに気づく蒼太。でも告白はできなくて。
・あかりを独り占めしたい。笑顔にさせたい。その気持ちを素直に…。
・待ち合わせをする蒼太。「僕じゃダメですか?」
《注意(記号表記:説明)》
「」 → 会話(口に出して話す言葉)
M → モノローグ(心情・気持ちの語り)
N → ナレーション(登場人物による状況説明)
※ただし「」との区別をつけるため、MおよびNは、:(コロン)でセリフを表記する。
【本編】
蒼太 N:何気ない学生生活。そんな中で、僕が自然と目で追ってしまうことがあった。
それは…。
あかり「もー、ホントだってばー!」
蒼太 「…ん?」
あかり「別にいないって!気になる人なんて!」
蒼太 N:クラスの女子たちが、いかにもと言った感じで、コイバナをしている。
普段なら大して気にもしないこと。でも、今その話題の中心にいるのは、あの子。
あかり「ホントだってばー。ってか、なんでそんなに聞いてくるのー?」
蒼太 N:顔は向けずに、聞き耳だけ立てる僕。聞きたくない話。でも聞かずにはいられない。
ああは言っても、きっと彼女にだって好きな人ぐらい、なんて思ってしまって、
僕は勝手にイライラしていた。
通りがかった友達が、不思議そうな顔で僕に話しかけてくるけど、相手にすることさえ
バカらしい、自分勝手な…、ヤキモチ。
* * * * *
あかり「(呟いて)別に私だって、興味はあるんだよ?そういう話はドキドキするし…」
あかり N:体育の時間。さっき友達と話していたことを思い出す。
笑ってごまかしてた私。そんなのいつものことで…。
だって、だってね?
恋に興味はあっても、私には敷居が高い気がして…。
ううん、そうじゃない。理由なんて単純で、ただ私が、不器用で人見知りってだけ。
恋に恋してた時期もあったからかな。好きな人なんて作れなくて。
だから…。
あかり「えいっ……って、あれ?」
夏樹 「こらー、あかりぃ」
あかり「えへ、ごめんっ。また空振っちゃった」
あかり N:だから……気づかなかったの。
+ + + +
蒼太 N:恋をするのに、理由なんてない。それっぽい理由が思い当たらなくもないけど、
そんなことで片づけられるなら、どうして僕は彼女を目で追ってしまうんだろう。
告白する勇気もなくて、離れて見ていることしかできなくて。
そんな自分がホントに情けない。でも、でもね…。
君を好きになった気持ちは嘘じゃないから…。
優 「おーい、蒼太!ボールそっち行ったぞ!」
蒼太 「へ?……って、ぶっ」
蒼太 N:ボールが顔面に直撃して、倒れる僕。痛みと情けない自分に、涙が出てきそうで。
彼女が好きな人とうまくいってほしい、なんて思うべきなんだろうけど、
僕は…。
ごめん、応援できないよ…。
うまくなんていってほしくない。最低だってのもわかってる。それでも…。
僕はきっと、性格の悪い悪魔の味方をしちゃうんだ。
優 「蒼太、大丈夫か…って、泣いてんのかよ!」
蒼太 「…全然泣いてねーし」
優 「泣くのはいいけど、とりあえず立て。保健室連れてってやるから」
蒼太 「いや、だから泣いてな…(グスッ)」
蒼太 N:変な誤解をされつつ、僕は友達二人に無理やり保健室に連れていかれた。
あー、もう。彼女が見てるってのに…。
* * * * *
あかり N:寝坊して、遅刻しそうになって、学校まで猛ダッシュ。
なんとか間に合って、教室の前で息を整えていると、声をかけられた。
蒼太 「おはよう!寝癖…ついてるよ?」
あかり「…え?……ホント?」
蒼太 「うん」
あかり N:声をかけてきたのは、クラスの男の子。ちゃんと話したのは初めてだったから、驚いちゃった。
鏡、見てきたんだけどなぁ。
あかり「えへへ、ナイショ」
あかり N:口元に指を立てて内緒のポーズ。はねた髪も、他の人に見られないように押さえつけて。
ただ恥ずかしくて、彼がどんな反応してるかなんて気にしなかった。
でもこういう時、好きな人がいたらきっと…。なーんて考えてしまう。
夏樹 「もー、遅いよ、優ぅ」
優 「わりぃ、わりぃ」
あかり N:友達が好きな人と笑顔で帰っていく。その様子をちょっと離れたところで眺めながら思う。
“好きな人ができたら、手を繋いで帰りたいな…。”
そんな照れくさいことを思って、すぐに我に返る。
あかり「(投げやりな感じで)なーんて。わかってますよ。独り言、独り言」
あかり N:でも、いつかきっと…。
他の子と同じように、普通にヤキモチをして、好きな人に妬かれたくて。
あの輪の中に入って、その度にまた胸を高鳴らせて。
きっとそういうの、私にもあると思うから。
* * * * *
蒼太 「……くぅ、反則だってば、マジで///」
蒼太 N:移動教室前。みんなが先に行き、誰もいなくなった教室で、僕は朝の出来事を思い出していた。
思い切って話しかけてみたら、“ナイショ”なんて可愛い仕草を見られて。
毎日が宙に浮くほどだったのに、今日はそれ以上で、一日中彼女のことを考えていた。
それだけによぎる、悪魔の囁き。
もしも、彼女の好きな人に好きな子がいたら…。
なんて、考えるのっていけないことですか?
蒼太 「…だよね。わかってますよ、独り言。……でも、嫌だよ、絶対…」
蒼太 N:彼女がそれで泣いてるとこなんて見たくない。
彼女には笑っててほしい。そしてその笑顔を僕だけに…。
そんな勝手なワガママとヤキモチが、僕を突き動かす。
このままじゃいけない。
彼女を――君を独り占めしたい…。
僕は教室を飛び出して、君を追う。
廊下に出ると、いつも過ごしている校内の景色が違ってみえた。
今まで行動に移せなかった僕。覚悟を決めただけで、こんなにも世界が変わるなんて
思いもしなかった。でも…。
ちゃんと、ちゃんと言うから。
ようやく見つけた君。後ろ姿でもわかる。だってずっと見てきたから。
蒼太 「…あのっ」
* * * * *
あかり N:後ろから声をかけられて振り返ると、そこにいたのは今朝の彼。
なんだろう、と思っていると、彼は少し俯きながら、でもまっすぐに私を見て言った。
蒼太 「…あのっ、話があります!今日放課後、4時10分、この教室で」
蒼太 N:思い切って、時間と場所を伝える。それが何を意味しているかなんて、きっと君も気づいてる。
心臓が鳴り止まない。でも今は、少しの間の我慢だから…。
あかり N:まともに彼と交わした2度目の会話。それなのに、どうして?
その言葉の意味をなんとなく理解しつつも、私はなんだか恥ずかしくて
ちゃんと顔も見れない…。心臓が鳴り止まない…。
私は静かにうなずいた。それ以上の言葉は出てこなかったから。
蒼太 「そ、それじゃ…」
あかり N:彼の後ろ姿を見つめて、しばらくその場に、ぼうっと立っていた。
放課後になって、待ち合わせの5分前に教室へ。
もし、もし他の子と同じように、これが告白なら、返事は……。なんて考えちゃう。
今までそういう風に見たことなかったし、でも、だってそんなこと言われたら…。
蒼太 N:待ち合わせの5分前。
ドア越しに向かい合う君と僕。伝えることは――ひとつだけ。
もし、もし付き合えたら、僕が君を毎日笑わせて見せるよ。
蒼太 「……よし。いくよ」
蒼太 N:高ぶる気持ちを抑え、覚悟を決めてドアを開ける。
それはさながら、おまじないのように僕の背中を押して。
蒼太 「……っ、早坂あかりさん、好きです。僕じゃ、ダメですか?」
(約5秒)
《 タイトルコール 》
蒼太 「 To be brave,One step ahead 」
(トゥー ビー ブレイブ ワン ステップ アヘッド)
あかり「一歩前に、勇気を出して」
蒼太 「この後僕らがどうなったかは…」(明るめに)
あかり「また別のお話…」(明るめに)
蒼太 「おわりっ」
fin...