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声劇×ボカロ_MDV-M
第2章 ミーティア
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第8話 《 記憶の地図 》
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【登場人物】
ミク 16歳
記憶を失くした少女。
社交性はあるので、塞ぎ込むことはない。
ザイン 24歳
トレジャーハンターを生業とする。
イニスとは同郷の幼馴染。
アイナ 16歳
ザインに付き従うヒューマノイド。
ある時を境に、ミクにも同様の対応を見せる。
イニス・シュトレー 25歳
独立自衛組織"オーバード"のリーダー。
組織を立ち上げる前は、アウフタクトで研究助手をしていた。
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| カデンツ |
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|オブリガードの首都エトヴァスに近い、地下組織"オーバード"の本部。 |
|自然の巨大な空洞を利用し、シェルの格納庫としても使われている。 |
|随所に補強と改良が施されており、シェルの移送管や射出口も複数存在する。 |
| |
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《注意(記号表記:説明)》
「」 → 会話(口に出して話す言葉)
M → モノローグ(心情・気持ちの語り)
N → ナレーション(登場人物による状況説明)
※ただし「」との区別をつけるため、MおよびNは、:(コロン)でセリフを表記する。
また本編は"N(ナレーション)"の中に"M(モノローグ)"が含まれることが多い。
【本編】
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イニス「待たせたな。首相も事態を把握してたようで、二つ返事で引き受けてくれたよ」
ザイン「首相ってオブリガードのだよな?お前、面識があるのか」
イニス「ある、というよりも、あの人が今の地位に就く前からの知り合いってだけだ。昔いろいろ世話になっ
てな」
ザイン「まったく、全然連絡を寄越さないかと思えば、すげーことになってるじゃねえか」
イニス「運がよかっただけ。そう言いたいものだね。さて、そこにかけるといい。立ったままってのもなんだ
しな」
ザイン「ああ」
ミク 「じゃ、じゃあ…」
アイナ「失礼します」
ザイン N:どんだけ長い話になるのか、ご丁寧に茶菓子まで出てきやがった。これじゃ本当に緊迫した状況な
のか、疑わしくなる。
イニス「俺はテシスを出た後、オブリガードに身を寄せた。そして知り合いのツテでアウフタクトで助手をし
ていたんだ。そこで勉強にもなるからと、書物を読むように言われ、すっかり本の虫になってしまっ
た。テシスにはロクな本がなかったからな。いろいろ読み漁ってるうちに、国の歴史なんかにも興味
が湧いて、研究そっちのけで読んでいたよ」
ザイン「本末転倒じゃねえか」
イニス「まぁ、そうだ。だがその中で、国とは違う歴史が綴られた一冊の本を見つけた。見つけたのは偶然だ
ったよ。たまたま手に取った書物の中に、この星について研究した人のものがあったんだ。そこには
こうあった。『この星は一定周期で核が暴走する』と」
ザイン「暴走?どういうことだ?」
イニス「よくはわかっていないんだが、どうやら俺たちの住むこの星は、核もまた生きているらしい。数千年、
いやひょっとするともっとそれ以上の周期で、核じたいが寿命を迎える。それをただ黙って見ていれ
ば、今俺たちはここにはいない。星は崩壊し、無に帰すからだ。俺たちが今もこうしてここにいると
いうことは、その都度誰かが崩壊を防いできた証。核となり得る物体を代替えとしてな」
ザイン「なんかムチャクチャな話だな。その本を書いたやつ、絶対頭おかしいだろ」
イニス「そう。その反応が普通だ。仮にこの推測が当たってたとしても、誰も信じようとはしないだろう。そ
れにそんな記録はどこにもない。だから当時も彼の妄想として終わったんだ」
ザイン「その妄想をお前が持ち出してくるってことは、何か信ずるに値するものを見つけたんだな?」
イニス「ザインはよくわかってるな。さすがだ」
ザイン「もったいぶらずに言えよ。それが本題なんだろ?」
イニス「まぁ、待て。いきなり結論を言っても理解できないだろう。順を追って説明する」
ザイン「はいはい。……それで何を見つけたんだよ?」
イニス「一枚の古ぼけた絵だ」
ザイン「絵?」
イニス「そいつがいつ描かれたものなのかはわかっていない。栞のように挟んであったそれは、今から1000年
以上も前の文献にあった。その本は誰かが後世に残すために書き写した模写本。一部の人間だけが、
それを行うことを代々課してきた」
ザイン「一部の、人間?」
イニス「王族だ。世襲制じゃないこのオブリガードも、かつては王族が支配していた。圧政によりクーデターが
起き、政治における実権はなくなったが、彼らの血はまだ途絶えていない」
ザイン「お前が見たのは、この国の王族が代々模写してきた大昔の記録だっていうのか」
イニス「そうだ。この国だけじゃない。シンガやジーグを始め、他の国も同様にだ。そして俺にその模写本を
見せてきたのが、今の首相だ。あの人は就任前、王族の住まう地に出入りしていた数少ない人物。手
に入れることなど、造作もなかったはずだ」
ザイン「ちょっと待て。それを何故お前に見せた?王族が絡んでるとすれば、普通は極秘案件だろう」
イニス「それは俺にもわからない。ただの気まぐれか、何か意図があってそうしたのか。もちろん訊ねてはみ
たが、未だ本心は聞けずにいる」
ザイン「まぁ、その話はいい。それで?」
イニス「問題はその絵に写っていたものだ。男が1人、女が1人、そして4体の怪物」
ザイン「4体の怪物?最近どこかで聞いた気がするが……。そうだ!あそこだ!トライアドの壁画!」
イニス「トライアド?シンガにあるという地下遺跡か」
ザイン「3つある入口のうち、2つはシンガに、もう1つはこちらに繋がっていた。あそこだ。お前と会った
モデラートの」
イニス「あれか。俺も気にはなっていたんだが、かなり深い穴だったから、探索は後回しにしていたんだ。で、
お前が見たっていう壁画の怪物はどういうのだった?」
ザイン「オオカミ、鳥、トカゲのような何か。あと1体はかすれていてよくわからなかったな」
イニス「やはり繋がるか」
ザイン「何がだ?」
イニス「そいつらは絵の怪物と一致している。そしてもう一つ」
ザイン「もう一つ?まだ何かあるのか?」
イニス「俺はその女を見たことがある」
ザイン「はぁ?バカ言え。その絵が1000年も昔のものだとしたら、そんなことあるわけ」
イニス「そう。ありえないんだよ。彼女そのものがいることじたい。君もそう思わないかい?ミク」
ミク 「……え?」
イニス「現物がこの場にないのが残念だが、その絵には今の君とまったく同じ姿をした少女が描かれていたよ」
ザイン「おいおい、ここまで来てなんの冗談」
イニス「これが冗談に聞こえるか?俺も驚いてるんだ。昔見た絵の少女が現れたことに。ミク、君はいったい
誰だ?」
ミク 「……それは…」
ザイン「どうなんだ、ミク?お前が俺たちに話そうとしていたことと、何か関係があるのか?」
ミク 「そ、それは…」
アイナ「お待ちください!あまり問い詰めるような言い方は!」
ザイン「初めて会った時から妙な感じはしていた。その答えがこれなのか?」
アイナ「マスター!!」
ミク 「いいよ、アイナ。大丈夫」
アイナ「……そう、ですか」
ミク 「ザインは知ってるよね。私の記憶がないこと」
ザイン「ああ」
ミク 「あれから記憶は少しずつ戻ってきてるの。大きく言えば2回。記憶の鍵を開けてくれた人がいて、そ
れをまた少し引き出してくれた人がいる。人って言い方もおかしいけど」
イニス「それが…」
ミク 「うん。それがあの2匹。私は彼らをそれぞれ"ティング"、"ヴェント"と呼んでいた」
ザイン「呼んでいた、って…。じゃあ」
ミク 「ううん。呼んでいたって記憶があるだけ。他の子も愛称で呼んでたけど、それはまだ思い出せない。
でも森でティングに会った時、なんだか懐かしくて、たくさん撫でてあげたの。すごく喜んでた。ま
るで私にずっとそうしてほしかったみたいに。ちょうどザインとアイナが飛び出してくる前くらいだ
ったかな」
ザイン「あれは襲われてるんじゃなかったんだな」
ミク 「うん。その時はまだ、大きな動物がじゃれたいのかなって感覚だった。外の世界に出たのも初めてだ
ったし、ああいう子がいるのも当たり前なのかなって」
ザイン「初めて、だと?」
ミク 「そうだよ。私はそれまでずっと、暗くて小さい部屋にいたの。扉なんてない、壁だけのね。あ、届か
ない高さに小さな窓はあったかな」
ザイン「お前とは森で会った。そのお前がどこかに監禁されていた?となれば、一番可能性があるのは」
イニス「ラングザームか」
ザイン「おそらくな。あそこは帝都から一番近い監獄だ。市民への見せしめでもあるのか、歓楽街からもそう
遠くない距離にある。だがどうやって出てきた?扉すらない部屋ってことは、帝国にとってお前は最
重要機密だってことになる。警備の数も尋常じゃなかったはずだ」
ミク 「さ、さぁ?」
ザイン「さぁってお前なぁ!」
アイナ「マスター、落ち着いてください」
ザイン「さっきからお前、やけにミクに肩入れしてねえか?」
アイナ「なんのことでしょう?」
イニス「ザイン、話の腰を折るな。それは俺も気になることではあるが」
ミク 「……ホントにわからないの。それまで同じ場所で寝て起きての繰り返しだったのに、二人に会う前の
日、目が覚めたら私は森の中にいた。どうしてそんなところにいるのか、どうやって抜け出してきた
のかわからなかったけど、初めて目にする景色に魅了されて、私は森の中を進んだ。あの時は遠くに
見えた山を間近で見たいのもあって」
イニス「その時点で記憶は?」
ミク 「ないよ。あったのは名前と、森とか山がどういうものかっていう知識だけ。空はずっと見ていたし」
イニス「自分がどれくらい閉じ込められていたかっていうのは?」
ミク 「わからない。壁と空。私にはそれしかなかった」
イニス「……鍵を開けたとは?」
ミク 「森で会ったあの子は、それが役割だったみたい。時が来たら、私が失くした記憶を彼らが繋いでくれ
るんだって。でもそれ以外はわからないって。思い出せないって」
イニス「なるほど。役目を果たすため、記憶にある思い出を枷としたんだろう」
ザイン「何故そんなことがわかる?」
イニス「ただの推測だよ。怪物とはいえ、1000年も生き続けるのは容易じゃなかったんだろう。余計な情報を
自らカットする道を選び、その時をひたすらに待っていたんじゃないかってな。まぁ、そんなこと普
通はできないもんだが」
ザイン「その時……か」
イニス「最初に君は言ったな。記憶が戻ったきっかけは大きく言えば2回だと」
ミク 「うん」
イニス「1回目がそいつを前にした時、ということか?」
ミク 「ううん、違う。あの子はもういないから」
イニス「いない?死んだのか?」
ミク 「そう。だから私に記憶が戻ったの。そして彼も…」
イニス「彼?」
ミク 「森のあの子を"目覚めの使者"とするなら、彼は"導きの使者"。迷っていた私たちをここに、あなたの
元に導いてくれた」
ザイン「まさか…!」
ミク 「うん。いたよ、あそこにも。ザインが人魂みたいって言ってたその先にね。あの時はライトも切れて、
二人にはちゃんと見えなかったみたいだけど」
ザイン「どれだ!?」
ミク 「どれ?」
ザイン「オオカミ以外のどいつだったんだ!?」
ミク 「ああ。トカゲっぽいのだよ、四つ足の。それが"ヴェント"。オオカミだった子が"ティング"」
ザイン「なるほど。スティンガーでティングか」
イニス「……戻った記憶とは?」
ミク 「もうわかってると思うけど、私は普通の人間じゃない」
ザイン「ああ」
ミク 「……私はアイナと同じヒューマノイド。ずっとずっと昔に作られた、ね」
イニス「それを証明するものはあるのか?アイナのように」
ミク 「うーん。限りなく人に近い偶然の産物だって言ってたから、私と同じような個体はいないんじゃない
かな」
イニス「言ってた?ひょっとして君を作ったのは、一緒に描かれていた…」
ミク 「うん、博士。私を本当の子供のように可愛がってくれて、寂しくないようにみんなも作ってくれた人」
ザイン「みんな?それが例の怪物どもか?」
ミク 「そうだよ。兄弟みたいに一緒に過ごして、毎日が楽しかった。だけど」
イニス「だけど?」
ミク 「さっきイニスが言ってたよね、核の暴走のこと。あれは一部の人しか知らないことなの。1000年前、
核の暴走を抑えたのが、彼。どうやって止めたのかはまだ思い出せないけど、核の暴走は本当のこと
なんだよ」
イニス「なぜそう言い切れる?」
ミク 「戻った記憶の中にそれがあった、じゃダメ?」
イニス「……うぅん。なんともいえないな。だがその話を信じる方向で動いていいだろう。少なくとも、俺は
あの日からそのつもりで動いてる」
ザイン「じゃあこの組織を作ったのも…」
イニス「そういうことだ。とはいえ、自然を相手に俺たちは無力だ。暴走を止める手立てがあったとしても、
ちっぽけな人間がただ集まっただけじゃ、何も起こせない。だから力を求めた。あそこに並んでる
機体がその結果だ。一方で俺たちをテロリスト扱いするやつもいたがな」
ザイン「黙らせたんだな。表向きの行動で」
イニス「まぁな。だが俺たちの存在は大っぴらにしたくなかった。そんな時、この国の後ろ盾を得た。俺たち
が今もこうして活動してられるのは、間違いなくあの人のおかげだ」
ザイン「そうだったのか。ところで、俺にこんな話をしたってことは、俺にも協力しろってことなんだろ?」
イニス「ふっ、話が早くて助かる。そういえば、アイナのメンテに行くと言っていたな。こちらからアウフタ
クトに連絡を入れておこう。受付で俺の名前を出せば、すぐにやってくれるようにな」
ザイン「助かる。それで、その後はどうする?」
イニス「それなんだが…。ミク、君にもう一つ聞きたいことがある」
ミク 「なに?」
イニス「君の昔の家族、ティングとヴェントだったか。彼らがそれぞれ"目覚めの使者"、"導きの使者"という
なら、この世界のどこかにあと2匹、君の記憶を持つ何かがいるんじゃないか?」
ミク 「……と思う」
ザイン「一匹はわかってるだろ。鳥のようなやつだ。スティンガーみたいに絵本のモデルとはいかずとも、場所
によっちゃ、伝承やらで祀られてる可能性だってある」
イニス「今のところ、ここにはそういう話は来てないな。だがあたってみる価値はある」
ザイン「つまりそれを俺にやれってことか」
イニス「ミクと共にな。俺は帝国の動きを見張ってなくてはならない。核の暴走が王族の知るところなら、この
タイミングでの帝国の宣戦布告には必ず意味がある。帝国に潜入してたやつが、そいつを掴んでる可能
性が出てきたんだ。仲間がアルシスに向かったのがそれだ。バルカロールでの戦闘も気になるし、お前
に行ってもらうしかないんだよ」
ザイン「久しぶりだってのに、えらく信用してくれてんだな」
イニス「お前は昔から変わらないよ。だから信用できる」
ザイン「はっ、そうかよ。だったらなおのこと、アイナのメンテをしてこないとな。行くぞ、アイナ。ミクも」
アイナ「はい」
ミク 「う、うん」
イニス「ミク」
ミク 「ん?」
イニス「すべてを思い出すことができたとしても、どうするか決めるのは君だ。ひょっとするとその決断が残酷
なものとなるかもしれない。それでも覚えててほしい。俺たちは君の味方だということを」
ミク 「……うん。ありがとう」
イニス「聞きたいことはまだ山ほどあるが、あとは残りの記憶が戻ってからでいいだろう。俺もこれ以上仲間を
放ってはおけないしな」
ザイン「ミク、行くぞ」
ミク 「うん」
ザイン N:ミクは部屋の外で待つアイナの元へ駆け寄っていった。
アイナのメンテが終わるまでの間に、なるべく情報を集める必要がある。
今は圧倒的に情報が足りない。
手に入れたかもしれないという帝国の秘密も、この星のことも、そしてミク自身のことも。
別行動となる以上、情報の共有は必須。
イニス「どうした?」
ザイン「……イニス。そっちのこともできる限り俺に教えろ。盗聴を警戒したとしても、お前んとこの連中は
いたるところにいるんだろう?そいつらに伝令をさせる」
イニス「ああ、そうだな。それでいい。必要ならシェルも出す」
ザイン「それは本当に必要となった時でいい。お前はまずこの国と仲間を守ることに専念しろ」
イニス「ふっ、言われるまでもない」
ミク 「ザイーン!」
ザイン N:俺もすぐに来ると思い、先に行っていたのだろう。遠くからミクの呼ぶ声がした。
イニス「呼んでるぞ」
ザイン「わかってるよ、うるせーな。……そうそう、お前に会ったら聞こうと思ってたことがあったんだ」
イニス「ん?」
ザイン「ヴァンはどうしてる?お前知ってるか?」
イニス「ああ。あいつなら太いパイプができたとかで、少し前から傭兵をやってるよ。今どこにいるかまでは
わからないが」
ザイン「そうか。帝国の動き次第じゃ、あいつにも手を貸してもらえないかと思ったんだが」
イニス「確かにあいつの腕は欲しいな。わかった。居場所を調べてみよう」
ザイン「頼む」
ミク 「ザイーン!」
アイナ「マスター!」
ザイン「ってアイナもかよ。同じヒューマノイドとわかった途端コレだ。同族意識ってやつなのかね」
イニス「さぁな。少なくとも素性がわかった今、あの子にとっては、マスターであるお前と同等かそれ以上の
保護対象になったんだろう。……無理はするなよ」
ザイン「ああ、わかってるよ。じゃあな」
ザイン N:そうして俺は部屋を後にした。
声のする方へ足を向けると、そこには待たされてふくれっ面の二人がいた。
仕草も表情も普通の人間となんら変わらないミクと違い、アイナがここまで感情を表に出していた
ことに、俺は素直に驚いた。これもミクの影響なのだろうか。
いつだったか思ったこと。ミクを死なせてはならない。
それは単に、ミクの記憶が必要となるからだけではないような気がした。
信じ難い非現実的な妄想は、俺たちの知らぬ間に、着々と終わりへと近づいている――。
M-08 "記憶の地図"