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声劇×ボカロ_MDV-M
第2章 ミーティア
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第6話 《 潜む足音 》
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【登場人物】
ミク 16歳
記憶を失くしていたが、徐々に取り戻しつつある。
自分の正体がわかるまではと、同行する二人には秘密にしている。
ザイン 24歳
情報通のトレジャーハンター。
世界中を旅してることもあり、知り合いも多い模様。
アイナ 16歳
ザイン所有のヒューマノイドで、見た目は人間の少女。
一度訪れた場所を記憶することができる。
ミリア・シンガリア・コルネット 32歳
シンガ王国歴代初の女王。
国を想うあまり、傭兵を雇い、裏の仕事をさせている。
ガロン 27歳
傭兵集団"ディスコード"のリーダー格。
高い報酬の出る仕事のため、首都に居着く。
ノクト 22歳
実年齢よりも幼く見える"ディスコード"の紅一点。
黙ってれば可愛いが、黙らないのでよくスピナーと喧嘩している。
フォン 19歳
どこまでもマイペースな"ディスコード"の最年少。
特技は"立ったまま寝ること"で、口数はあまり多くない。
スピナー 23歳
ガロンと一番付き合いの長い弟分的存在。
男所帯に華が欲しいと、最初に言い出した張本人。
近衛兵
シンガ王国謁見の間、及び女王の身辺を警護する一人。
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| シンガ王国 首都:カンティレーナ |
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|自然の恵みが豊かな国。そのため世界の交易の中心ともなっている。 |
|国を守護する騎士団の団長たちは、こっそりファンクラブができるほどの人気がある。 |
|幼い王子"ジオ・シンガレオ・コルネット"もまた、国民から可愛がられている存在である。 |
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《注意(記号表記:説明)》
「」 → 会話(口に出して話す言葉)
M → モノローグ(心情・気持ちの語り)
N → ナレーション(登場人物による状況説明)
※ただし「」との区別をつけるため、MおよびNは、:(コロン)でセリフを表記する。
また本編は"N(ナレーション)"の中に"M(モノローグ)"が含まれることが多い。
【本編】
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近衛兵「陛下、4人が参りました」
ミリア「通せ」
近衛兵「はっ。おい、お前たち。入れ」
ガロン「んだよ、偉そうに。あと毎回そんな目で見てくんなっつーの」
近衛兵「なんだと!?これだからよそ者は礼儀が」
ガロン「礼儀だとかそういうのは、あんたら騎士だけでやってくれ。俺たちゃ関係ねえ。なあ、そうだろ?
女王陛下」
近衛兵「貴様!それ以上陛下を愚弄すると、その首ここで切り落として!」
ミリア「もうよい。彼らは私が招いた客人だ。お前はもう下がれ」
近衛兵「しかし…!………はっ」
ミリア N:あやつも殊勝なことだ。彼らもここへ来るのは初めてではないというのに、それでもまだ警戒して
いる。だがそれも致し方あるまい。この謁見の間へ足を運ぶ者は、そのほとんどが高い地位を与え
られた者ばかりだ。正装なぞ知らぬような輩を前にして、落ち着いていられるはずもない。
ミリア「済まなかったな」
ガロン「別にいいけどよ。俺もこいつらも、いちいち気にしねえし」
ミリア「どうだ?少しはこの街の生活に慣れたか?」
ガロン「ん?あぁ、まぁな。つっても俺たちは傭兵だ。形だけの称号をもらっても、なんら変わりゃしない」
ミリア「それでもお前たちをこの国に留まらせるには必要な処置だ」
ガロン「人の気も知らねえで。それで今日はなんだよ?わざわざ呼びつけたってことは、なんかあんだろ?」
ミリア「話が早くて助かる。実はな、先刻オブリガードから使者が来たのだ」
ガロン「オブリガード?隣じゃねえか」 |
|スピナー「やっぱ食い過ぎだろ」
|
ミリア「うむ。火急の知らせとのことだったのだ |
が、どうやら帝国が不穏な動きを見せて |ノクト「ちょっと!今ここでそれ言う!?」
いるようだ」 |
|
|スピナー「あんだけ食って、お前の支払いが半分以下って
ガロン「それをわざわざ知らせに?この国にも情 | おかしいだろ!」
報収集に長けた奴らがいるだろう?」 |
|
|ノクト「スピナーだってドカドカ食べてたじゃない!!」
ミリア「無論だ。が、事態は思った以上に深刻だ |
った。ヴィヴァーチェに潜伏している同 |
朋によれば、すでに帝国軍の一隊がこち |スピナー「俺はいいんだよ。ちゃんと自分で食った分はし
らにやって来ているらしい」 | っかり払った。でもそれで割り勘の意味がわか
| らねえ。兄貴もフォンも、お前よりは食っちゃ
| いねえよ」
ガロン「おいおい、国家間で不可侵協定とやらが |
あっただろう?それを無視して来たって |
のか?」 |ノクト「でも二人とも割り勘で納得したじゃない!そうい
| う話でしょ!?それを今さら!!」
|
ミリア「そうだ。通達はない。つまり事実上の宣 |
戦布告だ」 |スピナー「だから食い過ぎだって言ってんだよ、バカ女」
|
|
ガロン「マジかよ…。なるほど、つまり俺たちに」|ノクト「バカじゃないもん!!バカって言う方がバカなん
| ですぅ」
スピナー「うっわ、ガキかよ。お前いくつだよ?」
ガロン「俺たちに…」
ノクト「22歳ですけど。ちゃんと自己紹介したのに覚えてないとか、バカなんですかー?」
スピナー「あぁ?やんのか、てめえ!」
ノクト「なによ!?」
ガロン「だーっ、もう!!うるっせえな、お前ら!!少しは静かにできねえのか!こっちは仕事の話してんだぞ!!」
ノクト「だって聞いてよ、ガロン!スピナーが」
スピナー「違うんすよ、兄貴。このバカ女が」
ガロン「いいから少し黙ってろ!!!」
ノクト「……はい」
スピナー「うす」
ガロン「ったく、少しはフォンを見習え。なぁ、フォン。お前も何か言ってやれよ」
フォン「すーすー」
ノクト「……フォン寝てるよ」
ガロン「立ったままかよ!?ちっ、どいつもこいつも自由すぎんだろうが」
ミリア「ふふ、相変わらずのようだな」
ガロン「あ?まぁな。ノクトが入って、いっそう面倒になった気がするぜ」
ミリア「それで話の続きだが」
ガロン「ああ。俺たちに出ろって言うんだろ?でもいいのか?国防となれば、それこそそちらの団長たちが黙
っちゃいないだろう?」
ミリア「奴らにももちろん命を出す。しかし手数は多いに越したことはない。それに貴様らには細かい指示は
不要だろう?」
ガロン「そういう契約だからな」
ミリア「それもあるが、私は臨機応変に対応する貴様らの経験を買っているのだ。統率が取れていればいいと
いうわけでもないのが戦場だからな」
ガロン「よくわかってるじゃねえか。あんたホントにただの姫だったのか?」
ミリア「私など、机上の空論を詰め込んだだけに過ぎん。現場を知る貴様らには及ばんさ」
ガロン「ま、こちらとしてはしっかり報酬をもらえればそれでいい」
ミリア「決まりだな。まずはバルカロールを目指せ。あそこを越えるには空路を選ぶはず。ならば帝国で噂の
空戦部隊が来るだろう」
ガロン「空戦部隊…?ふっ、同型機か。そいつは楽しみだぜ。ノクト、フォン、スピナー!久々に骨のあるや
つらが来るぞ。存分に暴れようじゃねえか!」
ノクト「ふふ、おっけー」
スピナー「ラジャっす」
フォン「すーすー。……んんっ、殺していいの?」
ガロン「そこは今まで通りだ。俺たちへの依頼は、つまりそういうことを意味する。だよな?」
ミリア「ああ、好きにしろ。だがヴァンたちと共闘する際は」
ガロン「わかってる、わかってる。あいつらを立てりゃいいんだろ」
ミリア「プライドが高い連中ばかりですまないな」
ガロン「騎士団を率いる連中だ。多少融通が利かないくらいが、ちょうどいいんだろうよ」
ミリア「かもしれんな。話が長くなってしまった。準備が整い次第、向かってくれ」
ガロン「あいよ。行くぞ、お前ら!」
* * * * *
ザイン「アイナ、そっちはどうだ?」
アイナ「はい。断線がいくつか見られましたので、修復を試みましたが、私の力ではとても」
ザイン「厳しいか」
アイナ「はい」
ザイン「機械であるお前にわからないなら、これ以上はどうすることもできないな」
ミク 「ねぇ、アイナはこういうのがわかるの?」
ザイン「生命としての機能を失わない限り、こいつらはある程度自分で修復できるように作られてるんだ。どち
らか片方の腕が残ってれば、たとえちぎれても、時間はかかるが元に戻る」
ミク 「はぁ~。すごいね、それ」
ザイン「まったくだ。今出回ってるヒューマノイドを開発したのはアウフタクトの連中だが、その基盤となった
ものを作ったのは、大昔の人間らしい。それこそここと同じような遺跡からそいつが発見され、その
複製を流用した結果が、初期のこいつらって話だ」
ミク 「その基盤って、アイナにもあるの?」
アイナ「はい」
ザイン「そいつはヒューマノイドの核とも言える代物だ。複製だろうが劣化版だろうが、そいつがなけりゃ動く
ことはない」
ミク 「ザインって本当にトレジャーハンター?やけに詳しいよね」
ザイン「俺だってこれまで世界中を旅してきたんだ。いろんな話を耳にするさ。アイナと旅をすると決めてから
は、ヒューマノイド関連もなるべく情報を仕入れるようにしてる」
ミク 「へー」
ザイン N:俺は物色していた手を止め、またあの壁画に目をやる。
これ以上ここに長居してもしょうがない。だから発つ前に、もう一度目に焼きつけておこうと思っ
たのだ。
アイナ「マスター?」
ザイン「一番右はあいつで間違いないとして、その隣は何だ?……鳥?」
アイナ「そう見えます」
ザイン「左の2体は、かすれててよくわからないな。崩落の影響がここにもあったと見える。とすれば、ここも
安心とは言えない。そろそろ行くとしよう。ミク、少しは休めたか?」
ミク 「うん、大丈夫」
ザイン「アイナは先導しつつ、万一のためにあの入口への最短ルートを…。アイナ?」
アイナ「マスター。まだだいぶ遠くではありますが、足音が聞こえます。おそらく」
ザイン「帝国の連中だな。本隊から来た偵察隊ってところか」
アイナ「わかりません。しかしこれでは」
ザイン「……進むしかあるまい。運よく残りの2つに繋がる道を引き当てれば、うまく逃げ延びれる」
ザイン N:そう、運よく。
ヴィヴァーチェ峡谷側に新たに見つかったという遺跡への入口も、中からのルートは詳しくわかっ
ていない。入口は見つかっても、入ろうという輩はそうそういないのだ。
あとは最後の1つ。この国のどこかに必ず繋がっているはずだが、果たして見つけることはできる
のだろうか。
懸念材料は他にもある。帝国がシンガに侵攻してきたのが事実なら、まったく情報が得られないまま
地上に上がるのは、正直危険だ。出た先が戦場の可能性だってある。
ミク 「大丈夫だよ、きっと」
ザイン「ミク?」
ミク 「ザインがいろいろ心配するのはわかるけど、なんとかなるよ」
ザイン「ふっ、えらく楽観的だな。でもそういうのも必要なのかもな。よし、それじゃ行くか」
ミク N:なんとなく、ここにも"いる"気がした。だから大丈夫なんて言葉が出てきた。
先を行く二人に聞こえないように漏れた言葉は、誰に向けられたものだったのか、どういう意味で言
ったのか自分でもわからない。
ミク 「……またね」
* * * * *
ザイン「よし、いいぞ」
ミク 「うっ、眩しい」
ザイン「なんとか出られたな。一時はどうなることかと…。それよりここはどこだ?アイナ、わかるか?」
アイナ「待ってください。………エトヴァスの南、農園が広がるモデラート丘陵のようです」
ザイン「エトヴァスだと!?それじゃここはオブリガードだっていうのか!?」
アイナ「はい、そのようです」
ザイン「まさか遺跡の入口最後の一つがオブリガードにあったとはな。確かにだいぶ歩いては来たが」
ミク 「ふぅ」
ザイン「疲れたか、ミク」
ミク 「さすがにね」
ザイン「ずっと地下にいて時間がわからなかったが、どうやら俺たちは夜通し歩いてたようだな。見ろ。日が
まだ昇りきっていない」
アイナ「ここで休まれますか?」
ザイン「そうだな。帝国の動向も気になるが、エトヴァスへ向かえば何かわかるだろう。今は体を休める」
アイナ「では私は少し周囲を見てきます」
ザイン「頼む」
ザイン N:アイナの姿が見えなくなると、俺は木の幹に背を預け、張っていた筋肉を重力に任せた。
ミクもぺたんと地面に座り込み、眠そうな顔をしている。
遺跡に入ってからどのくらい経ったのか、あれからシンガはどうなったのか。疑問は尽きない。
だが今は体だけじゃなく、頭も休める時。そう思ったのに、俺にはどうしても一つ確認しておきた
いことがあった。
ザイン「それにしても、いったいアレは何だったんだろうな」
ミク 「アレ?」
ザイン「お前も見ただろ?遺跡の中を漂う人魂のようなアレさ。行き止まりだったら戻ればいいからって、何故
かお前がその後を付いて行った。そしたらこうして外に出られたんだ」
ミク 「……そう、だったね」
ザイン「見えないはずなのに、そこに何かがいたような感覚はずっとあった。遺跡の中は湿っていたわけでも
ないのに、微かにヒタヒタと音もしていた。いったい何だったんだ?お前は何を知ってる?俺たちを
出口に導いた光と、それは関係あるのか?」
ミク 「それは…」
ザイン N:明らかにミクは何かを隠している。でもどう説明していいかわからず、困っているようにも見えた。
だから俺は、ミクが話してくれるその時まで待つことにした。
なんとなくだが、ミクが隠していることは、俺一人で処理できるような話ではないような気がした
のだ。
ザイン「もういい。困らせて悪かったな。だがそのうち必ず話してくれ。お前と知り合ってまだ間もないが、
俺もアイナもお前の味方だ。一人で抱えることはない」
ミク 「……うん、わかった」
ミク N:『お待ちしておりました』
あの時彼はそう言った。二人に姿は見えていないみたいだったけど、確かに彼はそこにいた。
大きなトカゲの体と、足には吸盤のようなものがついていて、歩くたびに微かに音を鳴らす。
そしてザインが人魂に見えたのは、尾の先端が光っていたせい。
記憶もまた少し戻ってきた。そのことが、彼が"彼ら"である証。
まさかこんなにも早く出会うとは思わなかったけど。
アイナ「戻りました」
ザイン「おう、アイナ。どうだった?」
アイナ「ここはモデラート丘陵で間違いありません。見下ろす景色が以前来たものと同じでした。国営の農園
からは少し離れているため、人々の往来は見られませんが、ひとまず危険はないようです」
ザイン「農園の害獣駆除と称して、警備隊が巡回してるからな。あとは盗難防止だったか」
アイナ「どうされますか?」
ザイン「そうだな。首都が近いのはラッキーだった。あそこはアウフタクトも近いし、いろいろと情報が手に
入るだろう。せっかくだからお前のメンテもして行くか」
アイナ「私は別に」
ザイン「自分じゃ限界あるだろう。ついでだ、ついで」
ミク 「決まった?」
ザイン「ああ。また少し歩くことになるが、この国の首都"エトヴァス"へ向かう。途中、農園を管理してる町が
あるから、そこで宿を借りよう。実際のところ、俺もクタクタだ」
ミク 「わかった。じゃあ、行こう。アイナ」
アイナ「はい」
ザイン N:仲良く手を繋ぐ二人が微笑ましく見えた。
それだけでもうひと頑張りする気にもなるってものだ。
でも俺はまだ知らなかった。事態は想像以上に深刻なものだったことを。
そしてそれを教えてくれたのは、組織のトップであり、幼馴染の――。
M-06 "潜む足音"