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声劇×ボカロ_MDV-M
第2章 ミーティア
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Battle Phase 1.5 《 戦況報告Ⅰ 》
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【登場人物】
《 Quartet Ritter 》 王国騎士団の4人の団長の総称。SkyShell(空騎士)が与えられている。
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ヴァン・シャルク 25歳
王都の北を守護し、メンバーのリーダーを務める。
出陣すれば指揮を執るのは確実。傭兵の4人を嫌っている。
[搭乗機:SSS-KR01 高機動型汎用機"プレスト"]
余計な装備を外し、機動力に全振りした近接特化型の機体。
ライラ・オヴェスト 24歳
王都の西を守る、ヴァンのよき理解者。メンバー唯一の女性。
ヴァンの指名により同行することとなる。
[搭乗機:SSS-KR02 高機動型中距離機"アレグレット"]
"プレスト"よりも機動力は劣るが、背面に二つの狙撃銃を持つ機体。
《 ディスコード 》 シンガ王国女王に雇われている傭兵集団。全員が自前でSkyShellを所持。
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ガロン 27歳
癖の強い面々を束ねるディスコードのリーダー。
躊躇いなく最前線に出るが、全体を俯瞰して見ることができるため、戦いながら指示を出すことも。
[搭乗機:SS-42M 高機動型近接機"カリマ"]
高速移動時、まるで陽炎のように残像を残すことから名前がついた。特攻用に一部の装甲は厚め。
ノクト 22歳
ディスコードに最後に加入する。少女の見た目だが、歴とした大人の女性。
前に出たがりな他の三人と違い、後方より相手の隙を窺い、狙い撃つ戦いを好む。
[搭乗機:SS-53GS 長距離支援型射撃機"アダラグレア"]
後方支援に特化した機体。特に長距離からの狙撃は、敵に何もさせないほど威力が高い。
フォン 19歳
普段はマイペースだが、戦闘になると豹変する。
それを敵と認識すれば止まらないが、ガロンの命令にだけは従う。
[搭乗機:VSS-64 機動型特殊殲滅機"モルテパスト"]
Vシリーズと呼ばれる、SkyShellでも異質の禍々しい外装の機体。巨大な鎌状の武器を持つ。
スピナー 23歳
ガロンを実の兄のように慕うが、ノクトとの口喧嘩はもはや日常。
目立ちたがり屋な上に、危険な目に遭うのも一番多い。
[搭乗機:SS-88W 機動汎用機"ヴェントラーマ"]
細かい軌道変化でヒット&アウェイを得意とし、急な方向転換にも強い。カリマ同様、装備は軽装。
《 帝国軍特殊部隊 》 "AllureXross""MadGear"を擁する好戦的な部隊。
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ロレン・アルロス 25歳
アルアクロスの隊長で戦闘狂。
ヒューマノイドによる戦闘部隊(Dolls)を、己の手足のように操る。
[搭乗機:SSG-AX01 "アルアコード"]
支配下にある機体を、己の手足として使うことができる特殊な機体。
ギルス・マドラー 25歳
マッドギアの隊長で戦闘バカ。
皇帝より極秘の任務を受けるが、久々の戦闘に血を滾らせる。
[搭乗機:SSG-MG01 "ゼールギア"]
機動力に特化した機体。瞬間的なスピードと火力は、帝国随一。
ヴィンセント・コール
マッドギア所属。常にギルスから一定の距離を取り、離れないような立ち回りをする。
[搭乗機:SSG-MG07 "マドリュート"]
帝国製のスカイシェル。隊長機と同じベースだが、スペックに大きな差がある。
イゾラ・ロラ
マッドギア所属の女性隊員。ギルスの邪魔にならない位置でサポートにまわることが多い。
[搭乗機:SSG-MG08 "マドリュート"]
同じく帝国製のスカイシェルで、装備や性能は隊長機より劣る。
《 その他 》
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一般騎士 王国騎士団に所属する。"Quartet Ritter"と違い、地上に部隊を展開している。
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| Quartet Ritter(カルテット リッター) |
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|王都の四方を守護する騎士団の、団長たちのことを指す。 |
|4機しかないスカイシェルに乗ることから"空騎士"と呼ばれ、名実ともに高い地位を得ている。 |
|団長就任時に、守護するエリアの姓を受け継ぐ。 |
| |
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| フィドル港 |
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|バルカロール大橋の支柱がある小島の港。 |
|国の水産資源を担い、海路での交易の中継地点にもなっている。 |
|王都に繋がる重要拠点のため、島全体が砲台となるよう機械化が進む人工島。 |
| |
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【本編】
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予想通り、我らはバルカロールの向こう側に敵機を補足した。こちらの陣形はすでに完了し、しばし睨み合い
が続くと思われた。が、奴等は速度を落とすことなく海峡を越え、我らに攻撃を仕掛けてきた。
誤算だったのは、敵がすべてスカイシェルであったということ。他に機影は見えないため、おそらく先行部隊
だったと思われる。
「くそっ。またやられた!お前たち、何をしている!?」
空を自在に駆ける敵機。地上の我らは翻弄され、一人、また一人と仲間が散っていく。
しかし空は奴等の独壇場ではない。我ら王国騎士団が誇る"空騎士"の二人が、指揮を執りつつ懸命に対処して
いた。だがそれでも手が届かないところを狙われ、部隊は半壊状態だった。
「相手はたかが10機やそこらだぞ!翻弄されることはない!集中砲火で追い詰めろ!!」
"空騎士"の一人で、指揮官のシャルク団長からの通信は、いくつかの感情が混ざりあっているようだった。
不甲斐ない我らに対する叱責と、思わしくない状況を打破する算段がつかないことへの焦り。主にその二つが、
声を荒らげる理由だろう。
全体を見る指揮官がそれでは、とも思った。しかし目まぐるしく状況が変わる戦場では致し方ないこと。その
ために、我ら小隊長という者が存在する。ただ敗走するのは簡単だ。問題は、いかにして仲間を生き延びらせ
るかどうか。
地上の我らの機体や装備では、敵機を撃破することへの望みは薄い。ならば迎撃し、直撃を避けること。死な
ないことが、最重要任務だった。
「まもなくフィドルの避難が完了。繰り返す。まもなく避難が完了」
混乱した戦場に届いた一つの希望。
交易の重要拠点ともいえる、ここバルカロール大橋には3つの支柱があった。王都側と帝国側に1つずつ、
そしてもう1つは、ヘミオラ海峡にある小島に造られていた。そこは国の水産資源を担うフィドラ港がある。
通信はそこの島民の避難についてのものだったが、それだけでは希望とは到底言えない。フィドラには秘密が
あった。
「距離を取れ!一時撤退!!」
右も左もわからぬ粉塵の中、私はそう命じた。敗走ではない。これは戦略的撤退だ。
追ってくる敵機の攻撃を防ぎつつ、我らはその時を待った。
「砲塔を上げよ!やつらに我らの力、思い知らせてやれ!」
シャルク団長の声を皮切りに、小島をぐるりと囲むように砲台が現れ、空の蠅共に向けて銃弾の雨が放たれた。
一斉に放たれた銃弾は直線軌道。縦に積まれた砲塔は、上下左右の逃げ道を失くす。それでも水面スレスレまで
高度を下げられれば躱されるし、上空も然りだ。一番まずいのは島の直上。高い位置から接近されればされるほ
ど、こちらが不利となる。
「落ち着いて躱せ!連発はできないはずだ。一つずつ潰していく。下の連中は後だ!」
確かに連発と言えるほど、間を空けずの砲撃はできない。本来なら発射のタイミングをずらすのだが、追い込ま
れた状況を打破しようと、そして敵の不意を衝こうとした結果が、全砲塔の一斉射撃だった。
一機でも島に取りつかれたら、一つどころかすべて破壊されるだろう。一時撤退とは言ったが、撤退しながらで
も攻撃はできる。この際照準なんて関係ない。
「撃て撃て!!取りつかせるな!」
そう告げた矢先、3つの影が高速でフィドルの方へ向かって行った。空騎士とは違うそれは、本当の意味での
我らの希望。噂には聞いていたが、私も彼らの戦いを見るのは初めてだった。
「おっと、そうはさせないぜ」
先頭の1機が光の矢を放つ。直撃コースだったのだろう。敵機は仰け反ったように見えた。
敵の指揮官らしき2機は引き離され、それぞれに彼らが対峙する。
片方はガロンの"カリマ"。もう片方にはフォンの"モルテパスト"。登録名はそのようになっている。
"カリマ"はシャルク団長の機体、"プレスト"と同系統の高速機。"モルテパスト"はなんというか……禍々しい
外装と背負った二つの鎌が印象的な、敵として現れたら恐怖を抱きそうな機体だ。
"モルテパスト"はフィドルから距離をとった敵を追尾し、鎌の一つを振り下ろす。攻撃を防いだ敵は衝撃に
耐え切れず吹き飛び、"モルテパスト"はそれをまた追う。もう一つの鎌をブーメランのように投げつけ、躱し
たところをまた斬りつける。投げた方は、戻ってきたところを逆の手でキャッチして、その勢いのまま攻撃を
繋げる。まるで人のような不規則な動きに、敵は明らかに翻弄されていた。
「お前は絶対俺がぶっ殺す!!」
見るからに躍起になっていた。鬼ごっこの鬼が入れ替わるように、今度は敵機が"モルテパスト"を追う。攻防
は繰り返され、こちらもヘタに援護できない状態。そもそも援護なんてしようものなら、彼らに邪魔者扱いさ
れ、狙われる可能性だってある。
「ここで待機だ!引き続き警戒と迎撃を行え!負傷者は救護班に!」
私は私のやるべきことをする。我らがここまで退いて来られたのも、敵の主力を引きつけてくれた彼らと、
小隊援護にまわっている空騎士の二人が尽力してくれたからだ。そしてこの戦いを後世に、人々に伝えるため
にも、彼らの行く末を見守る必要がある。
「すまない。ここの指揮を任せていいか?」
次に撤退してきた小隊長にすべてを任せ、私は部下数人を引き連れて高台へ向かった。途中、いくつもの光の
矢が頭上を渡り、その先で煙に変わるものもあった。
噂の傭兵集団"ディスコード"は全部で4人。対する敵は10機ほど。普通に考えれば、劣勢に変わりはない。
でも実力の違いが、そんなものすぐに埋めるだろう。その証拠に、少し目を放した隙に敵機の数は7機にまで
減っていた。
敵の主力2機は、変わらず"カリマ"と"モルテパスト"が相手をしている。数を減らしているのは、残りの2機。
登録名"ヴェントラーマ"、そして"アダラグレア"。
撤退する仲間を援護しつつ前線で駆け回る"ヴェントラーマ"と、後方から光の矢を放ち続ける"アダラグレア"
の2機が、みるみる数を減らしていく。聞こえてくる彼らの声は、まるで狩りでも楽しんでいるようだった。
「だーっ、俺の獲物取んじゃねーよ!」
「あんたがもたもたしてるからでしょ。人のせいにしないでよ」
「だったらお前も出張ってきやがれ!できるもんならな!」
「はいはい、煽るしか能のないバカだもんね、あんたは」
「んだとぉ!!」
おそらく後方で狙撃しているノクトはともかく、あれだけ前線で動き回っているスピナーの動きには目を見張る
ものがある。咄嗟の判断力と、正確な操縦技術がそうさせているのだろう。彼らは傭兵というから、もっとまと
まりのない戦いをするとばかり思っていた。だが実際はどうだ。あらかじめ役割分担をしていたのかもしれない
が、それぞれが自由なようでいて、その自由さがこの戦況を覆そうとしている。そうこうしてるうちに、また1
機、煙を上げて落ちていくのが見えた。これで残るは、主力の2機を含め5機。
「お前の取り巻きは全部落ちたぞ。次はお前の番だ」
ガロンが対峙する赤黒い機体へそう言っていた。
念のためと辺りを見渡すと、確かに同色の機体はもう残っていない。フォンが攻防を繰り広げている、もう一方
の藍鉄色の機体が4機。うち3機はスピナーが一人で相手をしている。
"カリマ"はスピードに物を言わせ、距離を取ろうとする赤黒の機体を追い回す。牽制のための銃器を放ち、接近
すれば腰に据えた剣を振り抜く。再装填の済んだフィドルの砲撃が来るとわかれば、そちらに誘導するような動
きをし、パイロットが攻めの一辺倒だけじゃないのがわかる。
対する"モルテパスト"も、基本的には"カリマ"と同様の動きをしていた。ただこちらは、遠目に見てもわかって
しまうほど、殺意が滲み出ている。執拗に相手を追い、死ぬことが怖くないのか、敵の攻撃にも全く怯む様子は
ない。やるかやられるか。それ自体を楽しんでるようにさえ見える。対峙する敵のパイロットも同類なのか、
2機は何度も刃を交え、付かず離れずの状態だった。それでも互いに致命傷となりうる攻撃を回避しているのは
さすがとしか言いようがない。
「隊長、あれを」
同行していた一人が、橋の向こうを指差した。そこには動く黒い塊。ゆっくりとこちらに近づいてきている。
フィドルでも補足したのだろう。空に向けていた砲塔の半分をそちらに向け、今度は時間差で撃ち込んでいた。
しかし依然と、塊はこちらへ向かってきている。それが何かなど、考えるまでもない。そう、時間切れ。敵の
本隊がすぐそこまで来ている。予想以上の被害を受けた我らに、あれを対処する術はない。
敵機も気付いたのだろう。それぞれが目の前の相手の攻撃を回避しつつ、徐々に後退している。スピナーが相手
をする3機はいち早く後退するも、当然スピナーはそれを追う。が、それを援護するように、橋の向こうからも
砲撃が始まった。進路を遮られ、仕方なく後退する"ヴェントラーマ"。代わりに"アダラグレア"が、後方からの
狙撃を試みるも、本隊にも同系統の機体がいるのか、我らの後ろに向かって走る光の矢があった。
「嘘でしょ!?この距離なのよ!!」
そう聞こえたかと思うと、今度は左右別々の角度から光の矢が放たれる。おそらく直撃を避けた"アダラグレア"
が、移動しながら撃っているのだろう。
「あんたちゃんと追い込みなさいよ!」
「うるせえ!あの中に突っ込んでったら、俺が直撃喰らっちまうだろーが!!」
「名前負けしてんじゃないわよ!!」
「それはこっちの台詞だ!!」
あーだこーだと通信が騒がしくなる。彼らのリーダーであるガロンも、本隊の存在には気付いているはずだ。だ
がここまで敵を追い込んだことで、砲撃の隙から赤黒の機体を撃ち落とそうとしていた。
「撤退だ!全機撤退!ただちに戦場を離脱しろ!!」
声の主はシャルク団長だった。すでに前線には騎士団の機体はなく、傭兵の彼らだけ。しかしこのままここに
留まることもできず、撤退の判断は正しいと言える。一度王都に戻り、態勢を整える必要がある。
陛下との間で何か話があったのか、納得いかない様子を見せたガロンも、仲間と共に前線から退いていった。
両陣営の撤退を確認した私は、置いてきた機体の元へ戻ることにした。撤退した部隊が背中を狙われるわけにも
いかないため、見張りとして一人を残しはしたが。
バルカロールにおける、大方の戦況報告は以上となる。
話には聞いていたが、やはり"ディスコード"の実力は本物だ。味方でよかったと、今日ほど思ったことはない。
だが彼らには個々の信念はあっても、正義や忠誠は期待できない。今日は味方だったが、次は敵となることも
あり得るのだ。今後のためにも、目で見て感じた脅威、対策を講じる必要があるだろう。それはまた、王都に
戻ってからの話だ。
声を張り上げたシャルク団長の言葉に、己の耳を疑ったのは、仲間と合流してすぐのことだった。
M/BP-1.5 "戦況報告Ⅰ"