声劇×ボカロ＿vol.6- R　　『 夏恋花火 』

 

 

Reach for you...　～ 冬咲ク花ニ君想フ ～

 

 

 

【テーマ】

 

素直になれなくて

 

 

 

【登場人物】

 

　小橋 輝（17）　－ Hikaru Kohashi －

母親の実家に行ったとき、優美と出会う。

優美に抱いた恋心は、伝えることなく時だけが過ぎる。

 

 

　高階 優美（17）　－ Yuumi Takashina －

明るくて友達が多く、少し子どもっぽい面の強い女の子。

初めは嫌々ながらも、輝のことを気にかける。

 

 

 

【キーワード】

 

・彼女との距離

・夏の日の思い出

・変わらぬ想い

・冬に舞う花びら

 

 

 

【展開】

 

・現）久しぶりに会った二人。変わらぬ恋心の輝。

・過）一緒に行った夏祭り。

 

　‡ふと触れた右手

　　‡花火の残像に祈る

　‡彼女と過ごしたい未来

　　‡伝えられなかった想い

 

・現）花火を持ってきて、寒いなか輝を誘う優美。夏祭りを思い出す輝。

・現）「一瞬の夢」を「未来」に変えるために…。

 

※１２月・８月→８月→１２月→１２月...end

　　　（起）　 （承） （転）　（結）

 

 

 

 

《注意（記号表記：説明）》

 

「」　→　会話（口に出して話す言葉）

 Ｍ 　→　モノローグ（心情・気持ちの語り）

 Ｎ 　→　ナレーション（登場人物による状況説明）

 

※ただし「」との区別をつけるため、ＭおよびＮは、：（コロン）でセリフを表記する。

 

 

 

 

【本編】

 

 

　輝 Ｎ：あの日、俺はお前に恋をした。

 

　　 　　その想いに気づいたときは、手が触れると一方的に怒ったり、わざと距離をとったり…。

　　 　　素直になれなかった。

 

　　 　　でも知り合いのいない土地で、頼れるのはお前だけ。

　　 　　だから花火大会に誘ってくれたときは、ホントに嬉しかった。

 

　　 　　浴衣を着てみたけど、そんな自分の見慣れない姿がなんだか恥ずかしくて。

 

　　 　　それでも…っ。

　　 　　その日一日だけでも彼女の「特別」になりたくて…。

 

 

 

 

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《 タイトルコール 》

 

 

優美　「Reach for you...」

 

 

　輝　「冬咲ク花ニ君想フ」

 

 

 

 

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優美　「こんにちわぁ、お邪魔しまーす。（呼びかけるように）おばぁちゃーん？」

 

 

 

　輝 Ｎ：彼女と初めて会ったのは、母の実家に連れてこられたときだった。

　　 　　同い年で、家も近所だからと、母は彼女に俺の面倒を押しつけた。

 

　　 　　正直、母の実家は結構な田舎で、都会育ちの俺にとっては、そこはつまらなくて。

　　 　　だからあまり一緒に来ることはなかった。おばあちゃんはすごく喜んでくれるけど。

 

　　 　　帰る日まで適当に家の中でゴロゴロして過ごすつもりだったのに…。

 

 

 

優美　「ねぇ、なんで黙ってんの？自己紹介ぐらいしたら？」

 

 

　輝　「別にいいじゃん」

 

 

優美　「うっわ、ひど。でもそんな興味ない顔されると、逆にムカつくんですけど」

 

 

　輝　「あっそ。よかったね」

 

 

優美　「…（ため息）はぁ。あ、そうだ！ねぇ、ちょっと付いてきてよ！」

 

 

　輝　「（面倒くさそうに）なんで？ってか、俺に構う…(な)」

 

 

優美　「（被せて）いいからいいから！」

 

 

 

　輝 Ｎ：半ば強引に俺を連れ出した彼女。自転車の後ろに乗るように言われ、それに納得できない顔を俺がしたのか、

　　 　　すぐに後ろに移動して、運転しろと促(うなが)す。

　　 　　また面倒なやり取りになりそうだったので、渋々俺は自転車に跨(またが)った。

 

　　 　　凸凹(でこぼこ)道をわざとスピードを出して走る。

　　 　　俺自身、途中何度か舌を噛みそうになったが、嫌がらせのつもりだったし…。

　　 　　彼女は全然平気な顔してたけど。

 

 

 

　輝　「なんでこんなことに…」

 

 

優美　「ねぇ、輝」

 

 

　輝　「何だよ、って呼び捨て！？」

 

 

優美　「別にいいでしょ、同い年だし。それよりさ」

 

 

　輝　「（不機嫌に）……なに？」

 

 

優美　「風、気持ちいいね」

 

 

 

　輝 Ｎ：母の押しつけと彼女の強引さにイライラしていた俺は、自然の匂いが混じる風すら感じることが

　　 　　できていなかった。じとーっとした、普段感じている風とは違った、気持ちのいいもの。

 

 

 

　輝　「…まぁ、な」

 

 

優美　「でしょ？じゃあ、もっとスピード出して！れっつ、ごー！」

 

 

　輝　「いや、結構全りょ…(く)」

 

 

優美　「（被せて）出せるよね？」

 

 

 

　輝 Ｎ：彼女がすごい顔で威嚇してくるもんだから、俺は人生で初めてなくらい足を動かした。

　　 　　彼女の言う目的地に着くと、汗でびっしょりの俺は、自転車を降りるとその場に倒れ込んだ。

 

 

 

優美　「やぁっと着いた」

 

 

　輝　「（息を荒くして）……お前、鬼…」

 

 

優美　「え、なんか言った？」

 

 

 

　輝 Ｎ：キョトンとした顔に、怒る気すらなくなってしまった。

 

 

 

　輝　「…っ、お前、無茶苦茶」

 

 

優美　「あ、やっと笑った！」

 

 

　輝　「え…？」

 

 

優美　「こっちにしばらくいるんでしょ？よろしくね！」

 

 

　輝　「あ…、あぁ」

 

 

 

　輝 Ｎ：彼女が見せたかったのは、高台から見下ろす町の風景だったらしい。

　　 　　でもそのとき俺が不思議な感覚になったのは、無邪気とも言える彼女の自然体だった。

 

 

 

 

＊　＊　＊　＊　＊

 

 

 

 

優美　「ねー、輝ぅ？準備できたぁ？」

 

 

　輝　「ちょ、ちょっと待ってっ」

 

 

優美　「先行っちゃうよー？」

 

 

　輝　「ま、待てって言ってるだろ！」

 

 

 

　輝 Ｎ：彼女に出会ったあの日から、ホントに彼女はちょくちょく俺のところに来るようになって、

　　 　　俺は一日のほとんどを彼女と過ごすようになった。

 

　　 　　でも、楽しい日々ももう終わる。明日、俺は帰るから。

 

　　 　　こんな田舎、いたくないと思っていた。早く帰りたいと願っていた。

 

 

 

優美　「あ、浴衣？へー、似合うね」

 

 

 

　輝 Ｎ：気づいたのは最近。楽しくて忘れていた。俺はずっとここにいるわけじゃないって…。

 

 

 

優美　「どうしたの？ホントに置いてっちゃうよ？」

 

 

 

　輝 Ｎ：俺は彼女を――優美を好きになっていた。

　　 　　でも一緒に過ごすのは今日で最後。優美にはまだ言ってない。

　　 　　今日は町の花火大会だから、思いっきり楽しみたくて。ちゃんと思い出をつくりたくて。

 

 

 

優美　「ねー、輝！」

 

 

　輝　「行くって言ってるだろ。うるさいやつだなぁ」

 

 

優美　「うるさいってあんた…。まぁ、いいけど。ちゃんとついて来てよね」

 

 

 

　輝 Ｎ：そう言って俺の前を歩いていく優美。会場に近づくにつれ、人ごみにつぶされそうになる。

　　 　　俺は彼女を見失わないか不安だった。手とか繋げたら、なんて思いながら。

 

　　 　　追いついて、ふいに伸ばした右手が彼女の裾を掴む。

　　 　　すると急に空が明るくなった。

 

 

 

優美　「あ、始まったね」

 

 

　輝　「……すげぇ…」

 

 

 

　輝 Ｎ：キラキラ光る花火に、湧き上がる歓声。

　　 　　彼女を見ると、照らされた表情がいつもと違って見えた。

　　 　　次々に打ち上がる花火の音とシンクロするように、俺の心臓が強く脈を打つ。

 

　　 　　もっと近づきたい。そう思っても、それ以上は何もできなくて。

　　 　　人ごみに押されて、ふと彼女に触れた右手が熱くなっていく。

 

 

 

優美　「輝、楽しかった？」

 

 

　輝　「へ？」

 

 

優美　「明日、帰るんだよね」

 

 

　輝　「あ…、うん。知ってたのか」

 

 

優美　「さっきね。輝を待ってるとき、おばさんに聞いたの」

 

 

　輝　「…そっか」

 

 

優美　「……うん…」

 

 

　輝　「なぁ、優美」

 

 

優美　「ん？」

 

 

　輝　「今日で最後なんだし、思いっきり楽しもうぜ？」

 

 

優美　「（笑って）あはは、もっちろん！」

 

 

 

　輝 Ｎ：あまり口にはしたくなかった《最後》という言葉。

　　 　　でも俺は、彼女の傍にいたくても、その願いは叶わない。

　　 　　だったら、せめて…。

 

　　 　　俺は打ち上がる花火に、この夏の思い出を振り返って。

　　 　　消えゆく残像に、儚い想いを乗せて。

　　 　　祈るように見上げて出た言葉は、誰にも聞こえない。

 

 

 

　輝　「……消えるな…」

 

 

 

　輝 Ｎ：なんだか寂しくなって、誰かに触れたくて、そこにいた大好きな人の手を握る。

　　 　　彼女は何も言わずに、握り返してくれた。

 

 

 

優美　「輝、お腹すいてる？」

 

 

　輝　「…いや、あんまり」

 

 

優美　「そっか。じゃあ適当に出店のもの買ってって、ちょっと離れたとこで見ようよ、花火」

 

 

　輝　「おっけ、りょーかい」

 

 

 

　輝 Ｎ：彼女は俺が手を握ったことには触れず、むしろしっかり掴んで離さない。

　　 　　いつもより近い彼女との距離に、俺は恥ずかしくなって遠くを見て返事をした。

　　 　　いつもより素直な自分に、気持ちがバレないか不安になったけど、彼女は気づかなかったようだ。

 

　　 　　好きの気持ちがどんどん大きくなる。

　　 　　伝えたい。今しかない。でも俺は明日にはもう…。

 

　　 　　芽生えた想いを打ち明けるか悩む俺とは裏腹に、花火は様々な彩りを見せて輝く。

 

 

 

優美　「…どうかした？」

 

 

　輝　「いや。綺麗だな、花火…」

 

 

優美　「そうだね」

 

 

　輝　「花火ってさ、消えてくとき、花がヒラヒラ舞ってるみたいだよな」

 

 

優美　「だから《花火》っていうんじゃない？」

 

 

　輝　「はは、そうだな。手を伸ばしたら届いたりして。（手を伸ばして）んっ、と…」

 

 

優美　「ばーか。そんなわけないでしょ」

 

 

　輝　「（呟くように）やっぱり届かないよな…」

 

 

優美　「……あんたさ」

 

 

　輝　「ん？」

 

 

優美　「ううん、なんでもない。ってか大丈夫？なんかいつもと違いすぎて気持ち悪いよ？」

 

 

　輝　「ひっで」

 

 

優美　「（笑って）あははっ」

 

 

 

　輝 Ｎ：鈍いというか興味がないというか。でもそんな彼女だから、好きになったのかもしれない。

　　 　　見た目とか性格とか、人を好きになる要因なんてたくさんあるけど、彼女はいつだって本当の俺と

　　 　　いてくれた。自然と素直な自分でいられた。

 

　　 　　だからこそ、もっと傍にいたかった。

 

 

 

 

＋　＋　＋　＋　＋

 

 

 

 

優美　「もしもし、優美だけど、私のこと覚えてる？」

 

 

　輝　「へ？ゆ、優美！？」

 

 

優美　「１２月にそっち行く用事あるんだけど、それをおばさんがお母さんに聞いたらしくて」

 

 

　輝　「そ、それで？」

 

 

優美　「何日かあんたんとこ泊まることになったから」

 

 

　輝　「えっ、ちょ。は？」

 

 

優美　「ってなわけで、またしばらくよろしくねー。それじゃ」

 

 

 

 

＋　＋　＋　＋　＋

 

 

 

 

　輝 Ｎ：あの日、あの花火大会の翌日、俺は思い出の地を離れた。

　　 　　優美は見送りには来てくれず、遠回しにフラれたんだと一人で納得していた。

　　 　　告白すらしてないけれど、そう思うことにした。無理にでも忘れるために。

 

　　 　　抱(いだ)いた気持ちを忘れることは簡単にはできなくて、何度も写真を見ていた。

 

　　 　　会いたい。

 

　　 　　その想いが消えることはなく、忘れようとしてた気持ちも、彼女に恋した事実もすべて思い出に

　　 　　しようと決めた頃だった。

 

 

 

　輝　「…優美が、ウチに…来る…？」

 

 

 

　輝 Ｎ：母に確認すると、笑いながら「問題ある？」なんて言ってくるし。

 

　　 　　彼女がウチに来るのは一週間後。

　　 　　久しぶりに会える。彼女がくれた思い出を、まさかこんなカタチで取り戻すことになるなんて。

 

　　 　　あのとき繋いだ右手が、また熱くなっていくのがわかった。

 

 

 

 

＊　＊　＊　＊　＊

 

 

 

 

優美 Ｎ：彼が帰る日、私は見送りに行けなかった。ううん、行かなかった。

 

　　 　　朝起きて、また彼を誘って遊びに行こうって思った。

　　 　　でも着替えてるときに気づいた。

 

　　 　　そっか、今日は…。

 

　　 　　いつからか、彼が喜んでくれるようにと、いろいろなことを考えるようになってた。

　　 　　どれだけバカにしても、口喧嘩をしても、最後には一緒になって笑う。

　　 　　私は彼の笑顔を好きになっていた。

 

　　 　　だから、きっと見送りに行っても、私も彼も笑えない。そんな気がした。だから行かなかった。

 

 

 

優美　「…ホント、なんで行かなかったんだろ…」

 

 

 

優美 Ｎ：地元を離れていくバスの中で、私はそう呟いた。

 

　　 　　そのときはそれが一番だと思っていた。いつもと違う夏の思い出。それだけだと思っていた。

　　 　　でも朝起きるたびに過(よ)ぎる彼の顔。それがいわゆる“アレ”なのかはわからなかったけど、

　　 　　久しぶりに会えば、すべてわかるような気がした。

 

 

 

優美　「えっと、地図、地図っと」

 

 

 

優美 Ｎ：おばさんが迎えに来てくれるって言ってたけど、私はそれを断った。

　　 　　なんとなく、一人で行きたかった。不安もあったけど、それよりも、彼にいきなり会うとか

　　 　　たぶん無理…。

 

 

 

　輝　「……優美…？」

 

 

優美　「へ？」

 

 

　輝　「…優美、だよな？」

 

 

優美　「……ひか…る？」

 

 

 

優美 Ｎ：忘れてた。あっちで輝は私の予想をいつも裏切ることばかりしてたってことを。

 

 

 

　輝　「久しぶり、だな。少しは成長したか？」

 

 

優美　「うっさい」

 

 

　輝　「疲れただろ？母さん、あっちで待ってるから、行こうぜ」

 

 

 

優美 Ｎ：花火大会のときと同じくらいな人ごみの中、迷わないためなのか、輝は私の手を掴んできた。

　　 　　動揺してるのがバレないように、平気な顔…できてるかな、私…。

 

 

 

 

＊　＊　＊　＊　＊

 

 

 

 

　輝　「あのさ…っ！ひ、久しぶり」

 

 

優美　「（笑いながら）さっきも聞いたよ、それ」

 

 

　輝　「いや、まぁ…。うん」

 

 

優美　「でも全然変わってなくて安心しちゃった。あ、背は伸びたんじゃない？」

 

 

　輝　「あー、そうかもなー」

 

 

優美　「あの頃は私の半分ぐらいだったのに」

 

 

　輝　「（笑って）あははは、アホか」

 

 

 

　輝 Ｎ：こんなボケも久しぶり。懐かしいようで、それが当たり前のようで。

　　 　　あの日からポッカリ空いていた心の穴が少しずつ埋められていく。

　　 　　それがわかり、俺はある決意をした。

 

 

 

優美　「お邪魔しまーす」

 

 

　輝　「どうぞ。あ、荷物こっちおいといて」

 

 

優美　「うん、ありがと」

 

 

　輝　「どのぐらいいるんだ？」

 

 

優美　「あーっと…、３日…かな」

 

 

　輝　「そっか」

 

 

優美　「なぁに、そんな顔して。ひょっとして帰ってほしくないとか？」

 

 

　輝　「ば、ばか。なに言ってんだよ」

 

 

優美　「はは。あ、私今から出かけるから」

 

 

 

　輝 Ｎ：そう言って、彼女は出て行った。途中まで送ろうかって言ったのに、気にしないでと一蹴。

 

　　 　　少しでも一緒にいたいって気持ち。いい加減、バレてもおかしくないのに…。

 

 

 

優美　「あんた、なんか怒ってる？」

 

 

 

　輝 Ｎ：用事を済ませ、ウチに帰ってきた彼女に、そう俺は言われた。

 

 

 

優美　「ねぇ、やっぱ外寒いかな？」

 

 

　輝　「当たり前じゃん。何月だと思ってんだよ」

 

 

優美　「そうなんだけどさ。こっち来る準備してるとき、ほら。こんなの見つけちゃって」

 

 

　輝 Ｎ：彼女が見せてきたのは、１０本ちょっと入った花火。

　　 　　でも今は冬。季節外れもいいとこ。それに何より、寒い。

 

 

 

　輝　「絶対やだ。寒いし」

 

 

優美　「…じゃあ、一人でしよっかな」

 

 

 

　輝 Ｎ：彼女が花火をしているところを見ようにも、この時期に窓を開けっぱなしにはできず、

　　 　　かと言って閉めだす気にもなれず、俺は仕方なく上着を持ってきて付き合うことにした。

 

 

 

優美　「うわぁ、やっぱ綺麗」

 

 

　輝　「気をつけろよな。空気も乾燥してて危ないんだから」

 

 

優美　「わかってるよ。ほら、あんたも持って」

 

 

　輝　「いい。手出したくない」

 

 

優美　「じゃあ、こうしたら大丈夫？」

 

 

 

　輝 Ｎ：彼女は花火を持っていた手と逆の手で、俺の手を握る。

 

 

 

優美　「ね？こうしたら、あんたも一緒にやってるのと同じでしょ」

 

 

　輝　「…う。いや、お前バカにも程(ほど)があるぞ。離せよ」

 

 

優美　「寒いから嫌」

 

 

　輝　「意味わかんねーから、ったく」

 

 

 

　輝 Ｎ：繋いだ手が熱くなってるのがわかる。今なら言えるかもしれない。

　　 　　そう思って彼女を見ると、あの日と同じように照らされた顔。胸の高鳴りが抑えられない。

　　 　　あのとき空に願った未来。祈るように見上げていた想い。

　　 　　目の前の花火が終われば、また…。

 

　　 　　消えるな…。

 

　　 　　不安になって、ほどけそうになった彼女の手をぎゅっと強く握る。

 

 

 

優美　「どうしたの？」

 

 

　輝　「……やっぱダメだ。…離すな…」

 

 

優美　「…うん」

 

 

　輝　「おう…」

 

 

優美　「…輝、私ね、あんたが好き」

 

 

　輝　「うん…。って、えっ！？」

 

 

優美　「あんたに会ってわかった。私ずっと、あんたに会いたかったんだ」

 

 

　輝　「……え、あ…っと…」

 

 

優美　「だからこの手は離さないよ」

 

 

 

　輝 Ｎ：相変わらず無茶苦茶な彼女。でも答えは決まってる。俺も同じ気持ち。

 

　　 　　握り締めた二人の手に小さな光が宿った。

　　 　　きっとこの光は、これからも輝き続ける。そんな気がした。

 

 

 

優美 Ｎ：夢に描いていた。彼と過ごした日々が“過去”ではなく“未来”に繋がるように。

 

　　 　　夏の日に恋した私たちは、きっとあの花火よりも輝ける。

　　 　　冬の澄んだ空気で、綺麗に舞い散る花火が、私たちを繋いでくれた。

　　 　　今ならわかる。あのとき輝が見ていたものが。

　　 　　あの儚げな光の軌跡を、届かないと思っていた想いを、夜空に浮かぶ桜に祈っていたことを。

 

 

 

　輝　「……俺も、好きだ」

 

 

優美　「やっぱりね。そんな気はしてたけど」

 

 

　輝　「なんだよ、それ。だったらもっと早く言えよな」

 

 

優美　「…簡単に言えたら、苦労しないよ」

 

 

 

優美 Ｎ：今日、寒さに負けず咲いた一輪の花。

　　 　　一瞬の輝きを、私たちの未来の彩りに変えて。

 

 

 

 

 

Fin...