_/_/_/ Ｒ２シリーズ（ボカロ朗読） _/_/_/

 

_vol.29-B

 

金曜日のおはよう

 

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【語り手】

 

　成海 聖奈（18）　－Sena Narumi－　
読者モデルをやっている。お嬢様系。
毎週金曜日に翠に挨拶したいとやきもち中。

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【参考】

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　濱中 翠（18）　－Midori Hamanaka－
関西からの転校生。
毎朝見かける聖奈のことが気になっている。

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《注意》

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・既存のボカロ台本の登場人物を“語り手”とした朗読。
・本編（ボカロ台本）に沿った内容。
・本編のすべてを朗読化するとは限らない。
（一部分を抜粋する可能性もあり）

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【 Reading 】

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朝の支度を済ませ、時計を見てふと思う。あの人は今起きたかな？って。
起きる時間なんて知らない。でも男子は女子よりも支度が面倒じゃないって聞くから、
ギリギリまで寝てそうなイメージ。

 

あの人っていうのは、最近気になる男の子。
同じクラスで、毎朝同じ電車なのに、一度も話したことなくて。
なのにどうして気になるの？って聞かれても、わかんないよ。
だから一番簡単で、一番自然な言葉を、私は毎朝練習。

 

「おはよう！」

 

待ち合わせしてた友達と合流して、電車を待つ。
電車が来るまでは普通に話ができているのに、アナウンスが流れると、適当に聞き流し始める私。
理由は一つ。
ドアが開いてすぐに、私は彼の存在を確かめる。彼はいつもそこにいて、いつも目が合う。
練習してたはずの言葉は、どこへやら。
いざとなったら緊張して、さっきまで堂々としてたはずの“勇気”は縮こまって。

 

今日は金曜日。来週の月曜まで、またお預け――。

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教室で彼の姿を探す。あれ、いない？
どこに行ったのか気になりつつも、同時にラッキーと思う。
それは朝の続きができるから。

 

「おはよう。おはよう！」

 

自然体で、元気よく、気さくに、礼儀正しく。
言い方やトーンを変えて練習してるうちに、私は周りの目が気にならなくなっていた。
代わりに瞼の裏に映るのは、笑顔の彼。
笑ってる彼を見てるだけで、それだけで元気出ちゃう。
ただ気になるってだけじゃない。彼に恋してるって気づいて漏れた言葉は…。

 

「…頑張らなくちゃ」

 

 

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一週間なんてあっという間で、結局私はまだ彼に挨拶一つできていない。
いつもの時間。いつもの車両。
毎日そこで彼に会えることが、私の小さな楽しみ。
…なんて考えてるうちに扉が開いて、タイミングを逃して、また練習は水の泡。
目は合っても、あと一歩がどうしてもできない。
落ち込む私の心を見透かしたように、空は今にも泣き出しそう。

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放課後になって、ついに降ってきた雨を見て、ふと思う。
彼は傘持ってきてるのかな？って。

 

友達との帰り道、雨宿りしてる彼がいた。
私はそれを見て、考えるより先に体が動いて。

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「あの、傘をどうぞ…」

 

声をかけてから自分のしたことに気づいて、恥ずかしくなって下を向く私。
相手にされないかなって思ったから、彼の言葉が本当に嬉しかった。
「ありがとう」だって。
彼も緊張してたのかな？ぎこちない感じで聞いた彼の言葉。初めてのやり取り。

きっかけなんてどこにあるかわからない。
だけど勇気のテストを乗り越えた私は、もうなんでも来い！って感じ。

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月曜日。いつの間にか日課になっていた朝のオーディション。
今まで以上に気合が入る。だって今日は絶対に…。

 

「うん、おはよう」

 

いつもみたいに目が合って、私はしっかり返す。
やっとできた朝の挨拶。一日の始まりの挨拶。
彼と交わす挨拶が、こんなにも嬉しいだなんて思わなかった。
でも今日はまだ続きがある。
傘を返してもらって、彼の手に触れちゃって、ドキドキがやまなくて。
交わす言葉も、共に過ごす時間も、これから増えてほしいなって。

 

もっと一緒にいたい。日曜日も会いたい。
あれも、これも、やりたいことはたくさん。

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ねぇ、大好きになっても、いいかな？

 

 

 

​

fin...

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