top of page

_/_/_/ R2シリーズ(ボカロ朗読) _/_/_/

 


_vol.12

 

HEAVEN

 


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

 

 

 

【語り手】

 

 桐山 和也(24)  -Kazuya Kiriyama-
彼女の失明を機に、結婚を決意する。
いつか必ず光を取り戻すことを信じて。

 

 

 

 

【参考】

 

 川原 みずき(24)  -Mizuki Kawahara-
突然目が見えなくなり、不安に駆られる日々を送る。
和也とは高校からの付き合い。

 

 

 

 


《注意》

 

・既存のボカロ台本の登場人物を“語り手”とした朗読。
・本編(ボカロ台本)に沿った内容。
・本編のすべてを朗読化するとは限らない。
(一部分を抜粋する可能性もあり)

 

 

 

 

 

 

 

【 Reading 】

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


君とのたくさんの思い出。そのどれもが、僕の心を埋め尽くしていた。
だから君との将来なんて、ずっと一緒にいることなんて、当たり前だと思っていたんだ。
でもそれはある日の、君の異変から、少しずつ変わっていった。
もちろん想いは変わらない。今も昔も。出会ってからずっと。

 

君に起こった異変。君は突然目が見えなくなってしまった。
君の目に、僕はもう映らない。
僕が君を支えなければいけないのは、十分わかっていたのに、その現実が判断を鈍らせる。だけど…。
光を失った君と、それでも共に歩む未来を決めた。覚悟を決めた。
伝えたい。これからも一緒にいてください、って。
伝えたい。愛してる、って。

 

病院のベッドで、彼女の手を取って指輪を渡す。
それが何かすぐに気づいた彼女は、何度も何度も自分でいいのか確認してきた。
だから僕も、何回も伝えた。君以外、考えられない。

 

ただ一つだけ、やり残したこと。
今までの彼女との日々と、さよならをする決断。
これから僕らは、きっと想像もつかないほどの苦労をするだろう。
過去を振り返らず、ただ前に進む。ひたすらに、まっすぐと。
幸せだった日々も、光を失った彼女にとっては毒になるかもしれない。
僕が彼女の光となって、手を引いていくためにも、さよならを…。

 


君の手術が決まった。成功すれば、また見えることになるかもしれないらしい。
僕は手術当日、彼女の手術の成功を祈って、青いバラを買いに行った。
蒼いバラの花言葉は『奇跡』だったから。
病院へ向かう途中、彼女から電話がかかってきた。声は上ずり、それだけで緊張が伝わってくる。
そんな彼女の緊張をほぐすためにも、僕は平然とした態度で「怖いか?」と聞いた。
内心は彼女以上に落ち着かなかったのに。
返ってきた言葉に、僕は思わず頬が緩んだ。
僕の顔が見れる。たったそれだけの言葉に、僕は嬉しさを隠せなかった。

 


僕と君の思い出はここまで。

 


僕は電話を切ってすぐ、交通事故に遭った。
大型トラックが交差点に突っ込んできて、僕はそれと衝突。
かろうじて動いた手を伸ばし、途中だった僕の気持ちに最後の一押し。
それは視力が戻った未来の彼女に向けての、一通のメール。

 

手術の甲斐もむなしく、僕は彼女に会うことなく死んでしまった。
きっと彼女も僕の後を追おうとするだろう。
でもたとえ僕がいなくても、ちゃんと生きていってほしい。
先に逝っておいて勝手な話かもしれない。
でも僕はずっと君と一緒にいる。君ならわかってくれる。そんな君だから、好きになったんだ。
僕に『奇跡』は起らなかったけど、君はちゃんと目が見えるようになっただろう?
これからその目で見えるもの、見えることを大事にしていってほしい。

 


みずき、もう届いただろうか。僕の気持ち。
短い言葉だけど、僕にとってこれ以上の言葉はなかったんだ。

 

愛してる。

 

ちゃんと目の前で言ってやれなくてごめんな。
たくさん涙を流すよね。夢だって思うよね。
でも僕はもういない。
それでも、今までも、これからも、僕たちはずっと一緒だ。

 

だからちゃんとさよならしよう。
みずきならできるよ。大丈夫。だって僕が好きになった人なんだから。
こっちへ来るのは、もう少し精一杯生きてからね。

 


約束だよ。

 

 

 

 

 


fin...

bottom of page