ハロウィン声劇
俺様ハロウィン ~ 王子の甘い囁き ~
【登場人物】
笠貫 光 - Hikari Kasanuki -
無邪気な女子高生。ちょっと間抜けだが、明るい性格。素の流を知る数少ない人物。
流のことを「りゅーにぃ」と呼ぶ。
佐久間 流 - Nagare Sakuma -
面倒くさがりの大学生。いつも眉間に皺を寄せているせいか、近所の子どもには敬遠されている。
愛称は「りゅう」。
男の子
女の子
近所のおばさん
近所のお姉さん
【展開】
(ハロウィンでの出来事を振り返る)
・子どもたちと一緒に各家庭を訪問する光。
・流の部屋を最後に訪れる光。子どもたちは流を怖がって、先に帰る。
・面倒くさく光を追い返す流。
・めげずに流の家を訪問する光。
・光の唇を奪う流。その場に立ち尽くす光。
(・現在に話が戻り、今も流の気まぐれに振り回される光)
【絶対ワード】
・トリック オア トリート
【本編】
流 :10月31日。テレビでは《ハロウィン》ということで、お菓子を配ったり、
園児が仮装してお宅訪問をしたりといった様子が映されていた。
今日も、この国は平和らしい…。
流 「まったく、なーにがハロウィンだ…。俺には関係ないね、うん」
流 :もうとっくに日は昇りきり、そろそろ月と仕事を交代するような時間。
俺はまた布団に潜り込んだ。
* * * * *
光 :今日はバレンタ……じゃなくて、ハロウィン!近所の子どもたちと一緒に
ちょっとした仮装して、ちょっとずつお菓子を分けてもらうんだぁ。
りゅーにぃの家にも行かなきゃね。子どもたちは、なんでか怖がってるから、
りゅーにぃのとこは、最後でいっか。
光 「みんなー、準備はできたー?」
男の子「できたよー」
女の子「おねーちゃん、はやくいこー」
光 「よし、じゃあ行こっか!はい、ピンポン押して」
男の子「ピンポーン♪」
女の子「(小声で)しーっ、静かにするの!」
おばさん「はーい、どちら様~?」
光 「トリック オア トリート!」
女の子「お菓子をくれないと」
男の子「いたずらしちゃうぞー」
光 :事前に回覧板で告知があったから、各家庭には準備がされていた。
もちろん子どもたちは、そんなこと知らないけど、みんな笑顔でお菓子を
受け取り、その子どもたちの喜ぶ姿を見た人たちも、笑顔になっていた。
お姉さん「いたずらはされたくないから……、はい!これで許してくださいっ」
男の子「やったー」
女の子「おねーちゃん、ありがとー」
光 「じゃあ、次行くよー」
光 :いつの間にか保護者としてまわっていたはずの私も、一緒になってはしゃいで
いた、だって楽しいんだもん。しょうがないじゃん?
光 「さて、次で終わりだねー。次は…、りゅーにぃか」
男の子「オレかえる。あいつきらい」
女の子「あたしもー。こわいもんね、あのおにーちゃん」
光 「(呆れて)はは…。私も一緒だよ?それでもイヤ?」
男の子「もうおかしいっぱいもらったから、いらない」
女の子「ひかりおねーちゃんも、いかないほうがいいよー」
光 :ほんと評判悪いな、りゅーにぃは…。ま、私でさえ、素顔のりゅーにぃなんて
滅多に見ないんだから、当然といえば当然か…。
光 「じゃあ、みんな気をつけて帰るんだよー」
女の子「はーい」
男の子「だいじょうぶ。オレんち、すぐそこだし」
光 :今日一緒にまわった子どもたちは、私の家の隣にあるマンションの子どもたちで、
最初からこうなるだろうと思っていた私は、このマンションを最終ルートとして
いたのだ。
そしてその子どもたちに評判の悪いりゅーにぃの住むアパートは、私の家の
向かいにある。実は一度来てるんだけど、子どもたちはすごくビクビクしてた
なぁ、そういえば。
光 「寝ては…、いないよね。ピンポーン…って、口に出しちゃダメじゃん!私!」
「・・・・」
光 「…あれ?お留守なのかな?何回か押してみよ」
何度もインターホンを押す光。
「・・・・」
流 「うるっせえな。誰だよ、こんな時間に…」
頭をかきながら、ドアを開ける流。
光 「あ!りゅーにぃ、トリック オア トリート!お菓子くれないと、いたずらしちゃう…」
流 「あほか」
ドアを閉める流。
光 「…ぞ、ってちょっと!りゅーにぃ!!」
インターホンとノックを交互に繰り返す光。
光 「もしもーし、いるのはわかってるんですよー。お菓子くれないと、明日ドアが
どうなってても知らないですよー」
流 「うるせえな、帰れ」
光 「あー、いいんですねー。明日起きたときに、ドアがすんごい恥ずかしいことに
なっててもいいんですねー」
流 :ドア越しに聞こえる光の声。あいつなら、やりかねない。というか、むしろ
何をしでかすか見当がつかない。昔からあいつはそういうやつだ。
面倒くさいと思いながらも、この状況を手っ取り早く解決する方法を、
俺は思いついた。ま、あいつには悪いがな。
光 「りゅーにぃ、久しぶりなんだしさぁ。お菓子はいいから、少しは構ってよぉ」
ドアを開ける流。
流 「…(ため息をついて)はぁ。で、なに?」
光 :ドアを開けてくれたことが嬉しくて、ついさっき口にした自分の言葉を忘れた
私。というか、ドアが開いた反動で、今日何度も言った言葉を…。
光 「りゅーにぃ、トリック オア トリートぉ!!」
流 「…バカか、お前」
光 「お菓子くれないと、いたずらしちゃう…」
流 「(キス音)ちゅっ」
流 :俺は光の言葉を遮った。自分の唇で。
光 「……ぞ…」
流 「それで?いたずらされた場合は、どうなんの?」
光 「…え、それ…は…。いや、あの…」
わけがわからない光。
流 「特になんもないなら、俺もう寝るな。それじゃ」
光 「…あ、うん…。お、おやすみ…」
流 「おう」
ドアを閉める流。
一人立ち尽くす光。
光 「……なんで、キス…した、の…?」
* * * * *
光 「…なーんてこともあったよねー」
流 「そうか?俺は覚えてねーわ」
光 「絶対ウソだ」
流 「なんでそう思うんだよ」
光 「じゃあこっち見て話せば?」
流 「…やだ」
光 「ひょっとして照れてんの?かっわいー」
流 「(舌打ち)ちっ、うるせーなー。光、ちょっと来い」
光 「なにー?」
光の耳元で囁く流。
流 「(囁いて)大好き」
光 「……っ///」
流 「(はははっ…)」
真っ赤になる光。
その反応を楽しむ流。
光 :あの頃も、そして今も。私が夢中になるのは貴方だけ。
貴方の気持ちを知ってから、貴方の笑顔を知ってから、私はすっかり虜に
なりました。
だから…
意地悪なことは、あんまりしないでね?
冗談でも、嫌いだなんて言わないでね?
それから…
耳元で囁くのは反則だって、いい加減覚えてね?
今日は二人で迎える3回目のハロウィンです。
Fin...