top of page

 

 

声劇×ボカロ_St.Valentine's Day vol.01 『 ちょこまじ☆ろんぐ 』

 

 

Melting Chocolate ~ あなたはどっち? ~

 

 

 

【テーマ】

 

バレンタイン(学生)

 

 

【登場人物】

 

 水沢 仁美(17) -Hitomi Mizusawa-

祐介のクラスメイト。祐介との仲の良さが自慢。

今年は一歩先に進みたいと思っている。

 

 

 吉見 愛依(16) -Mei Yoshimi-

祐介の部活の後輩で、仁美の幼なじみ。

仁美を“ひとちゃん”と呼び、実の姉のように接してきた。

 

 

 佐野 祐介(17) -Yusuke Sano-

いわゆる鈍感で無自覚な男の子。

モテない自分は、今年もチョコをもらえないと思っている。

 

 

 

【キーワード】

 

・真剣勝負

・仁美の想い

・愛依の想い

・バレンタイン当日

 

 

【展開】

 

・愛依の告白(仁美に好きな人ができたと告げる)

・応援すると言いつつも、内心穏やかではない仁美。

・仁美の気持ちに気づく愛依。

・当日、偶然にも同じ場所に祐介を呼び出した二人は…。

 

 

 

 

《注意(記号表記:説明)》

 

「」 → 会話(口に出して話す言葉)

 M  → モノローグ(心情・気持ちの語り)

 N  → ナレーション(登場人物による状況説明)

 

※ただし「」との区別をつけるため、MおよびNは、:(コロン)でセリフを表記する。

 

 

 

 

【本編】

 

 

愛依 「あのね、ひとちゃん。私、好きな人できちゃったっ」

 

 

仁美 「えっ、ほんとに!?だれ、だれ?私の知ってる人?」

 

 

愛依 「あー、う~ん。知ってるんじゃないかな。私の部活の先輩だから」

 

 

仁美 「愛依の部活の先輩って…。え、ひょっとして…」

 

 

愛依 「…うん、佐野先輩。でも私女の子っぽくないからダメかもなぁ…」

 

 

仁美 「そ、そんなことないって!愛依、可愛いじゃん」

 

 

愛依 「そ、そうかな…?あのね、応援…してくれる…?」

 

 

仁美 「(下唇を噛む感じで)…っ。もうすぐバレンタインだもんね!応援してる、がんばれっ!」

 

 

愛依 「うん!ありがとー、ひとちゃん!」

 

 

 

仁美 N:そうは言ったものの、どうしよう…。

 

     姉妹のように育った幼なじみの愛依が、ウチに遊びに来るのはいつものこと。

     でもまさか、そんな妹のような彼女と、同じ人を好きになるなんて…。考えもしなかった。

 

 

 

仁美 「……祐介…」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

祐介 N:2月10日。今年ももうすぐ嫌な日がやってくる。そう、俺のような非モテ男子にとっては最悪な…。

 

     だんだんと浮かれ始める生徒たち。今年こそは!と無駄に意気込むやつ。誰に渡すか相談するやつ。

     俺は冷めた感じでぼそっと口にする。

 

 

 

祐介 「はっ、たかがバレンタイン」

 

 

仁美 「なーんて言いながら、心の中では『リア充爆発しろ』なんて思ってるんでしょーが」

 

 

祐介 「そんなの当たり前…って、仁美!?」

 

 

仁美 「あんたそんなんじゃ、いつまでたってもチョコなんてもらえないよ?」

 

 

祐介 「…うるせ」

 

 

 

祐介 N:クラスメイトの仁美は、気が合うというか、一緒にいるとなんだか楽なやつ。

     さすがに付き合いもそれなりに長いし、義理でもくれないかなって思ったりもするけど…。

 

 

 

仁美 「あ、ちなみに、もし私からのチョコを期待してるんだったら諦めてね。あんたに義理はもったいない」

 

 

祐介 「うわっ、ひっでぇ」

 

 

仁美 「去年と違って後輩もできたんだし、誰かがくれるかもよ?」

 

 

祐介 「そんなに都合よくいったら苦労しねーっての」

 

 

仁美 「そんなのわかんないじゃん?」

 

 

 

祐介 N:いや、あの。笑顔でそう言われてもですね。

 

     一番可能性のあるやつに、あっさり拒否された俺は、凹んだ様(さま)を悟られないように教室を出て行く。

 

 

 

仁美 「(呟いて)…応援、ってこういうのでいいのかな…。(深いため息)はぁ~。……ばか」

 

 

 

仁美 N:すっかりデコレーションされた街並みに隠すように、私は自分の気持ちを押し殺す。

     溢れないように、この高鳴る鼓動を抑えつけて…。

 

 

 

仁美 「夢の中だと、伝えたい気持ちとかもすんなり言えちゃうんだけどなぁ…」

 

 

祐介 「え、なんか言ったか?」

 

 

仁美 「…っ!?(動揺して)ききき、聞いた…?」

 

 

祐介 「なにを?」

 

 

仁美 「いや、聞いてないならいいんだけど」

 

 

祐介 「あ、そ」

 

 

 

仁美 N:愛依の告白を聞いたあの日、しばらく考えた。このままでいいのかなって。

     応援する。応援したい。その気持ちに嘘はない。でも…。

 

     友達と話す彼を見る。少しずつ熱くなってくるのが自分でもわかる。

     そしてこういう時に限ってこいつは…。

 

 

 

祐介 「ん?どうした?」

 

 

 

仁美 N:(呆れつつ)目を合わせてくるんだよねぇ。

 

     強がって、なんでもないよってバシッと頭をたたいたりして。

     彼に触れて熱くなった手も、赤くなった頬も、私がどうしたいのかを素直に告げる。

 

 

 

 

仁美 「(呟くように)…やっぱり無理だよ」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

愛依 N:ひとちゃんがどんな反応するかなって思ってた。きっとひとちゃんは先輩のこと…。

     でも応援するって言った。がんばってって…。

 

     私をいつも笑顔にさせてくれる先輩。気づいた気持ちを早くプレゼントしたい。

     でも…。

 

 

 

愛依 「ちゃんと勝負したかったのに…」

 

 

祐介 「勝負ってだれと?」

 

 

愛依 「え、あっ!せせ、先輩!?」

 

 

祐介 「俺とする?同じ短距離同士」

 

 

愛依 「いや、あのっ。えっと、それもいいんですけど…。ほ、ほら!今日はストレッチだけですし」

 

 

祐介 「だから走れなくてストレス溜まってんのかなって思ったんだけど」

 

 

愛依 「そんなことないですよー。むしろ…」

 

 

 

愛依 N:先輩の近くにずっといられて嬉しいです!なんて言えるわけもなく…。

     その言葉を飲み込んで、私は無理やり笑ってみせた。

 

 

 

祐介 「むしろ?」

 

 

愛依 「なんでもないですよーだっ」

 

 

祐介 「…よかった。やっと笑った」

 

 

愛依 「え?」

 

 

祐介 「いや、なんかさ。やっぱ吉見は笑ってる方がいいなって思ってさ。その方が可愛いよ」

 

 

愛依 「……っ///」

 

 

祐介 「じゃあ俺今からミーティングだから。サボんなよ?」

 

 

 

愛依 N:さらりと先輩はとんでもないことを言っていった。あれでモテないっていうんだから…。

 

     もう止まらないよ。この胸のドキドキは隠せない。

     後悔しても知らないからね、ひとちゃん。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

祐介 N:2月14日。ついにやってきた運命の日。そう、俺は今日チョコをもらえるのだ。

     ただそれが安定の母親から、ということでなければどれだけ嬉しいか…。

 

 

 

祐介 「(ため息)はぁ…。なんかもう、浮かれてるやつらが憎いわ」

 

 

仁美 「ねぇ、祐介」

 

 

祐介 「あ?なんだよ」

 

 

仁美 「お、お父さんにあげるチョコを買いに行くから付き合ってよ」

 

 

祐介 「あー、まぁ、いいけど」

 

 

仁美 「(小声で)やったっ。(ごほん/咳払い)じゃあ、いつものところで」

 

 

祐介 「おっけー」

 

 

 

祐介 N:そのついででもいいから、俺にもくれよなぁ。いいじゃん、別に義理ぐらい。

     あー、マジで今日一日憂鬱なんだろうな…。

 

     放課後、部長は「今日」という日の空気を読んだのか、部活は軽いミーティングで終わることになった。

     そんなことでいいのか、なんて言っても無駄だと思ったから言わなかった。それに突っ込む気力さえない。

 

 

 

祐介 「あー、マジでめんどくせぇ」

 

 

愛依 「先輩!」

 

 

祐介 「ん?どうした、吉見」

 

 

愛依 「今日これから予定ってありますか?」

 

 

祐介 「んー、まぁ。あるっちゃあるけど…」

 

 

愛依 「少しだけでも時間って作れません?」

 

 

祐介 「いいけど、なんか用事なら別に今でも…」

 

 

愛依 「ここじゃダメなんです!」

 

 

祐介 「お、おう…。わかった」

 

 

 

祐介 N:指定された時間までだいぶ時間があった。部活が早く終わることを仁美にメールして、俺はいったん家に帰る。

 

     パートに出ている母親が、まるでサンタのプレゼントのように、机の上にチョコを置いていたのは、あえて

     触れないでおこう…。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

仁美 N:祐介からメールが届く。しばらくやりとりして、待ち合わせの時間を決める。

 

 

 

仁美 「…もう、なんでこんなにドキドキするの…?」

 

 

 

仁美 N:とびきりのお洒落をしても、霞んでしまうぐらいバレンタイン一色の街並み。

     だんだんと近づいてくる待ち合わせの場所。治まらない胸の鼓動。上がる体温。

 

     あの角を曲がれば、彼がいる。

 

     でも早く、この想い、ちゃんと伝えたい。

 

 

 

仁美 「ごめんね、遅くなって」

 

 

祐介 「いや、俺もさっき来たとこだし」

 

 

仁美 「そっか」

 

 

祐介 「さて、行くか」

 

 

仁美 「え、あっ」

 

 

祐介 「どうした?チョコ買いに行くんだろ?」

 

 

仁美 「いや、えっと」

 

 

愛依 「あれ、ひとちゃん?」

 

 

仁美 「え、愛依!?」

 

 

祐介 「吉見!?え、もうそんな時間だっけ?」

 

 

愛依 「いえ、先に行って先輩を待ってようかなって思ったんですけど…。そっか、やっぱりひとちゃん」

 

 

仁美 「そ、そういうことだからっ」

 

 

祐介 「なんだよ、二人して!なにも知らない俺がバカみたいじゃん!」

 

 

愛依 「そうですよ!」

 

 

仁美 「あんたはバカなの!超がつくバカ!」

 

 

祐介 「…はぁ?意味わかんねーよ」

 

 

 

祐介 N:どうしたらいいかわからず俯いていると、いきなり突き出される2つの包み。

     顔を上げると、そこには頬をストロベリー色に染めた二人がいて…。

 

 

 

仁美 「これあげる。言っとくけど、義理じゃないよ」

 

 

愛依 「先輩!ずっと好きでした!」

 

 

祐介 「え、俺に…?」

 

 

仁美 「他にだれがいるっていうのよ」

 

 

 

仁美 N:ここまで来たら、笑顔で渡そう。そう思ってとびきりの笑顔をつくる。

 

 

 

仁美 「大好きだよ、祐介!」

 

 

愛依 「先輩を好きな気持ちは私だって負けませんから!」

 

 

 

祐介 N:もらえるなんて思っていなかった今年のバレンタイン。それをまさか一度に2つもなんて。

     そしてそれはどっちも本命で…。

 

     ん?…どっちも本命…?

 

     あれ、ってことは…。

 

 

 

 

《 タイトルコール 》

 

 

仁美 「Melting Chocolate」

 

 

愛依 「~あなたはどっち?~」

 

 

 

 

祐介 「も、もうちょっと待ってっ!」

 

 

愛依 「ダメです!」

 

 

仁美 「はっきりしなさいよ、男でしょ!」

 

 

祐介 「でも、あの…」

 

 

愛依 「先輩!」

 

 

仁美 「祐介!」

 

 

仁美

 &  「「アイシテル!」」

愛依

 

 

祐介 「ああああああっ!!!!おわり、おわりっ!!」

 

 

 

 

fin...

 

bottom of page